面倒くさがり屋と真面目君
体育館でワイワイとみんなが騒いでいる中、たった二人体育館の脇に座っていた。
一人は制服をきっちり着込み、もう一人は私服でだらしなく座っている。
「あの〜…保志?なんで俺達ここに座ってるんですか?」
制服を着ている少年が保志とだらしなく座っている少年を呼んだ。
彼は日高 保志【ヒダカ ホシ】。学力はあるのだが、かなりの面倒くさがりやで、高校も面倒くさいの一点張りで結局中学校のほうが無理やりここに入れたも同然だった。
もう一人の少年は宮之 亮一【ミヤノ リョウイチ】。保志とは小学校からの腐れ縁で保志のことが心配で決まっていた公立校を蹴ってこの高校にやって来た。
根っからの真面目で学校へ行きたがらない保志を連れて毎朝登校している。
「面倒くさいから。そんなに行きたいんなら…亮一、行けばいいだろ?」
「別に行きたいという訳じゃないけど…やはり、学校行事として参加した方が…」
ゆっくりと立ち上がり、服についた埃を払う。
「…やっぱり行くんじゃねーか。行って来いよ、俺は寝る」
「何言ってるんですか保志、貴方も行くんですよ。まったく…保志が俺より頭が良いとは思えませんよ…」
ガシッ!と保志の襟首を掴み、引きずりながら呟く。
「それを言うなら、お前が俺なんかの為に志望校を蹴ったかが分からないな」
保志が負けずに言い返すが、引き摺られてるので示しがつかなかった。
「それはですね、保志のご両親の為に決まってます。俺が居なかったら学校に行かなかったでしょ?そしたらせっかくの学費が無駄になるじゃないですか」
「…それで、お前は良かったのかよ?」
「………」
亮一が立ち止まる。保志は立ち上がり、亮一を見つめた。
「目指してた高校まで蹴って…お前、バカだろ?」
「そうですね…俺はバカですよ。それでも良いんです。こうして友達と同じ高校へ来れたんですから」
笑顔で恥ずかしいことをいう亮一。「やっぱり、バカだこいつ…」と保志は思ったが、口には出さずにいた。
結局保志は、寝ることを諦めて二人で適当にテーブルを陣取って食事をしながら話していた。
「それにしても…よく親が許したな」
「あれ?言ってませんでしたか?両親は早くに亡くなったんですよ。今は従兄に仕送りをしてもらってるんです」
そうニッコリと笑う亮一に保志は呆れた。
「保志はどうですか?」
「俺の親は諦めてたからな…」
お手上げとでも言うように両手を挙げた保志を見て保志は笑った。
「何だよ?」
「別に?」
笑い続ける亮一に保志は何ともいえない表情をするのであった。
「さて、そろそろパフォーマンスも終わりますね」
「あぁ、確か部活か委員会どっちか必ず所属しないといけないんだよな…面倒くさい」
「また、そういうことを…。たまには大変な部活にでも入ってみたらどうですか?」
そんな他愛もない会話をしながら、保志と亮一は歓迎会を過ごすのたった。
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