「違うのよ、いや…違くはないんだけど。"運命を入れ替えるスタンド"なんて、説明が面倒でしょう」

なまえは、誰に責められたわけでもないのにそう言い訳をしながら項垂れる。
"説明が面倒"だと言い切ったなまえではあるが、この場にいるジョセフ以外の人物は説明をしてもらわないとわからない、といった表情を浮かべていた。

「じゃあ…何か?今のは、名字と承太郎の運命を入れ替えたってことか?」

「うん、まあ、そう。そうね。空条くんの『操られている』という運命と、私の『操られてない』という運命を入れ替えた。だから『操られていない』空条くんは動けたし、私は動けなかった」

こういった説明でわかっただろうかという不安の表情を浮かべるなまえ。その表情からは、これまでにスタンドの説明をした際に苦労してきたことがわかる。

「じゃあこの、俺の『舌に穴が開いてる』運命と花京院の『舌に穴が開いてない』運命も入れ替えられるってことか?」

「なんで僕なんだよ…」

ポルナレフの問いに、花京院は呆れたように言葉を零した。
なまえは勿論それを入れ替えようとはしなかったが、首を1度縦に振る。

「でも、その場合は両方の舌が私の視界に入ってないと出来ないよ」

「見えてない・理解できていない運命は入れ替えることができない、か…。他に入れ替えられない条件は?」

花京院の理解の早さに助かると胸を撫で下ろしたなまえは少し考える。
入れ替えられない条件は、あと2つ。全てここで喋って良いのかと考え、ここまで来たのなら言うべきだという判断を下した。

「スタンドの運命を入れ替えることは出来ないの。それは、スタンド攻撃もそう。スタープラチナが投げるその辺の岩とかは入れ替えられるけど、ハイエロファントグリーンのエメラルドスプラッシュは入れ替えられない。ジャスティスの霧もね」

スタンド使いの運命を入れ替えることは出来ても、スタンドには効果がない。
それは、財団にいた頃、ジョセフの手伝いもあってわかったことだ。例外はない。

「あと…"続いてない運命"を入れ替えることはできない」

「それ、さっきも"続いてる運命"だとか言ってたが、どういう意味だ?」

「死んだモノに入れ替えられる運命はない。それがゾンビでも吸血鬼でも」

そこに本人の意思があろうがなかろうが、少なくともなまえのスタンドは彼らの運命は"終わった"と判断する。
ポルナレフは先ほどまでのゾンビたちを思い出し、だからなまえが逃げ切れなかったのかと納得した。

「なるほどな。それならDIO自身は運命を入れ替えられる心配がねえ。だからなまえを狙ったのか」

「え?」

今まで黙って話を聞いていた承太郎の推測。
承太郎は相変わらず無表情で何を考えているのかわからなかったが、なまえはそれが、どうもこちらの様子を伺っているようにしか思えなかった。
しかし、だとして―――"そんな見当違い"なことを、あの空条承太郎がわざわざ口にするだろうか?
なまえは、1つの結論に行き着く。だが、にわかには信じられなかった。
彼は――空条承太郎は、自分の推測が間違っているとわかっているうえで、名字なまえに逃げ道を与えている。
そう考えれば、彼の態度にも納得がいく。多少の疑問は抱くかもしれないが、ポルナレフも花京院も、この場では納得してくれるだろう。

「(でも…………)」

なまえは考えた。本当に、それでいいのか?
自分はこのまま全てを話さず、"最後まで"行くつもりなのか?
ぐるぐると、脳内で問いが繰り返される。
答えを頭で出す前に、先に口が動いていた。

「……違うよ」

「なまえ、」

心配そうに名を呼んだのは、ジョセフだった。
なまえは、そんなジョセフに大丈夫という意味を込めて首を横に振る。

「…私とDIOは、100年以上前に出会ってるの」

「なっ…………!」

「それって!!!」

突如、ポルナレフが動く。
一体なんだと驚いたなまえだったが、なまえの背後に立ち、全身を覆うように両腕を上に伸ばしたポルナレフに、なまえは丸くした目を戻せないでいた。

「何ぼーっとしてんだよ!承太郎も花京院も日陰作れ!!」

「え……っと、」

なまえもポルナレフ以外の全員も、その言葉でポルナレフが起こした行動を理解する。
ポルナレフに言葉をかけたのは、なまえである。

「ポルナレフ…その、私は別に吸血鬼じゃないから、陽の光は大丈夫だよ」

ポルナレフが位置を変えたことで確かになまえが立つ位置は日陰になったが、それはただ涼しくなったというだけで、今までもなまえの身体に異常はない。
というよりも、これまで共に普通に旅をしてきたのだからわかるだろう、とでもいうように他の三人は呆れた表情を浮かべていた。

「そうなのか…?でも、てっきりそうかと」

「名字さんが吸血鬼ではないというのはわかるが、ならどうして100年以上前のDIOと…?」

スタンド能力か何かだろうか、と花京院は自身の顎を手で触れて思考する。
そして、花京院の推測はあながち間違ってはいない。
なまえは100年以上前の"あの日"、スタンドを使ったことにより今ここに存在しているのだ。


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