一行を乗せた車は、インドの北部へたどり着き、パキスタンへの国境を越えた。
災難ともいえる状況に陥ったポルナレフとジョセフの敵スタンド使いとの戦いの話を聞いていたなまえたちであったが、そこまで敵はこちらに休む暇を与えてくれないということか、と溜息をつきたくなる。
しかし一行は、それ以外にも溜息をつきたくなる要素を抱えていた。

「だってあたし女の子よ、もう少したてばお姉ちゃんみたいに綺麗になるわ。そんな年ごろになって世界を放浪するなんてできないでしょ。今しかないのよ、今しか!家出して世界中を見て回るのは!そう思うでしょ?」

なまえの膝の上に座り、隣にいるジョセフや承太郎、そして助手席に座る花京院、あろうことか運転しているポルナレフにまで語りかける。
その人物は、シンガポールで父に会いに行ったはずの家出少女だった。
なまえは静かにその少女を膝の上においてるものの、誰も少女の話に耳を傾けてはいない。
元気があるのは何よりだが、自分達だって普通の旅行をしているわけではない。
いつ敵のスタンド使いがくるかわからない状況で、一般人、しかも子供を巻き込むことなどしたくはない。
国境まで連れて行き、飛行機代を出しそこで別れるという結論に至り、先を急いでいるところだった。

「?」

と、後ろから派手なクラクションの音。
運転しているポルナレフ以外が、後ろを振り返る。
そこには、見覚えのある車が先を譲って欲しそうにピッタリと後ろをくっつきながら走っていた。

「さっき追い越した車だ。いそいでるよーだな」

「ボロ車め!トロトロ走りやがったくせに、ピッタリ追いすがりやがって何考えてんだ?」

「ポルナレフ。片側に寄って先行かせてやりなさい」

「ああ」

ジョセフの言葉に、仕方が無いとでもいうようにポルナレフは道を譲る。
窓から手を出し先に行くよう伝えると、後ろの車はライトで応えた。
横を通り過ぎる車。
承太郎とポルナレフは静かにそんな車を目で追っていたが、特に何もなくその車はポルナレフたちの前へつく。
しかし―――

「おいおい、どういうつもりだ?またトロトロ走り始めたぞ。譲ってやったんだからどんどん先行けよ!」

先程――家出少女を拾う前だ――もこの調子でこの車は前を走っていたため、ポルナレフはこの車を追い越したばかりだった。
その際小石を弾いて相手の車に当てたのだが、それが気に障ったのだろうか、となまえは苦笑いを零しそうになる。
そう考えたのはどうやら花京院も同じようで、隣のポルナレフへ口を開いた。

「ポルナレフ。君がさっき荒っぽいことをやったから怒ったんじゃあないですか?」

それもあるかもしれない。
しかし、と承太郎は花京院から視線をポルナレフへうつす。

「運転していたヤツの顔は見たか?」

「いや…窓がホコリまみれのせいか見えなかったぜ」

「おまえもか……まさか追手のスタンド使いじゃあないだろうな」

気をつけろポルナレフ、という言葉に、ポルナレフは静かに頷いた。
ただ家出少女は状況がわかっていないようで、退屈そうになまえの膝の上で鼻歌を歌っている。

「運転席の窓が開いたぞ」

ポルナレフと承太郎が座る箇所からは前の車の運転席が見えるようで、開いた窓から現れる腕をじっと見つめた。
すると、先程のポルナレフのように指をくいっと動かすではないか。
"先に行け"―――そうジェスチャーで話す男に、ポルナレフは笑いを零す。

「プッ!先に行けだとよ。どーやらてめーの車の性能がボロくてスピードが長つづきしねーのを思い出したらしいな。初めっから大人しくこのランドクルーザーのうしろ走っていろやイカレポンチがッ!」

「ポルナレフ。おまえが悪いんじゃぞ。挑発するからじゃ」

荒っぽいポルナレフに、ジョセフは溜息をついた。
しかしまあ気持ちはわからなくもない、とそれ以上責めるようなことは言わなかった。
ポルナレフは慣れた手付きで車の横を通り抜けようとする。
瞬間、ポルナレフの顔から笑みが消えた。

「うわあああ!トラック!バカな!!」

右は崖。左には車。そして、前方には大型のトラック。
どう見ても事故を防げない状況にポルナレフはパニックを起こしていたが、それでもどうにか逃げ道はないかと探していた。しかし、こんな状況ではどうすることもできない。

「シャッフル…あっ!」

咄嗟に、なまえはその"トラック"と位置を"交換"しようとしていた。
しかし、前に座っていた家出少女が驚きに飛び上がったせいで視界が遮られる。
なまえのスタンドは―――"視界に入っているもの"にしか使えない。
しまった、と思うがもう遅い。
トラックと一向を乗せた車は正面からぶつかり――――大きさや重さからして、こちらが大ダメージを受けるのは当然。
全員の思考回路が停止した。瞬間、

「『星の白金スタープラチナ』ッ!!!」



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