地面に、正面から倒れこむポルナレフ。
アヴドゥルは地面にしゃがみ、その前には拳よりもフタ周りほど大きな穴が開いていた。

「さっき炎であけた穴にさっきの炎はトンネルを掘っていたそこからクロス・ファイヤー・ハリケーンをッ!」

「一撃めはトンネルを掘るためだった…言っただろう。わたしの炎は分裂、何体にもわかれて飛ばせると!」

ポルナレフは身体に深いダメージを負ったようで、静かに地面に伏している。
地面の穴を通すため最初のような大きな炎ではなかったが、その威力はやはりとてつもないものだったらしい。
アヴドゥルは小さく呻き声をあげるポルナレフへ、いつの間にか手にしていたナイフを投げつけた。
しかしそれはポルナレフの身体へではなく、ポルナレフが手を伸ばせば届く位置の地面へと突き刺さる。

「炎に焼かれて死ぬのは苦しかろう。その短剣で自害するといい」

不思議そうにナイフを見つめていたポルナレフにアヴドゥルはそう言うとなんの躊躇いもなくクルリと背を向けた。
なまえは近くにあった石を誰にも気付かれずに拾い、手の中へ隠し持つ。
ポルナレフは静かに自分から遠ざかるアヴドゥルを睨み上げ、地面から抜いたナイフを右手で掴み、震える手も気にせず手を大きく振りかぶった。
その腕をそのまま振り下ろせば、恐らくこちらへ背を向けるアヴドゥルに突き刺さるだろう。

「……………………」

ポルナレフは、しばらくアヴドゥルの背中を向けていた。
しかし少し何かを考えた後慣れた手付きでナイフをクルリと回すと、その切っ先を自分の喉へ突き立てる。

「うぬぼれていた。炎なんかにわたしの剣さばきが負けるはずが、ないと…」

体中が熱いのか、痛いのか。
もうポルナレフにはわからなかった。
しかし、カラン、とナイフが地面を鳴らす。

「フフ…やはりこのまま潔く焼け死ぬとしよう…。それが君との闘いに敗れたわたしの君の『能力』への礼儀……自害するのは無礼だな…」

そのまま炎に身を任せるかのように、ポルナレフは地面へ身体を預けた。
しかし、アヴドゥルは勢いよく振り返るとパチンと指を鳴らす。
既にポルナレフは気絶していたが、命に別状は無いように見える。
その様子を見たなまえは、そっと手に持っていた石を地面に落とした。

「あくまでも騎士道とやらの礼を失せぬ奴!しかも、わたしの背後からも短剣を投げなかった………!DIOからの命令をも越える誇り高き精神!」

殺すのは惜しい、とアヴドゥルはうつ伏せに横たわるポルナレフの額を探った。
そこには、花京院と同じように肉の芽が植えつけられていた。
アヴドゥルは承太郎を呼ぶと、承太郎は静かに頷く。
そしてスタンドを出し、花京院にしたように肉の芽をポルナレフの額から抜いていった。

「承太郎、肉の芽をはやく抜きとれよ!早く!」

ジョセフは肉の芽が気持ち悪くて嫌いだとでもいうように顔を背けながら承太郎を急かす。
そんなジョセフに静かにしろと怒鳴りたいものの、集中している今そんなことに気を向けてはいられない。
花京院や虹村にやったように自分に食い込んだ肉の芽を勢い良く抜き取ると、ジョセフは慌てて波紋で肉の芽を消し去り、立ち上がった承太郎のかわりにポルナレフを起き上がらせると機嫌がよくなったように笑った。

「…と!これで、肉の芽が無くなって"にくめ"ないヤツになったわけじゃな。ジャンジャン」

「花京院。オメー、こーゆダジャレ言うやつってよーっ、ムショーにハラが立ってこねーか!」

そんな承太郎の苛立ちから逃げるように、ジョセフはわざとらしく笑い続けていた。


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