「おいおいお嬢さん。おれは返事をあの人に渡そうとしてたのに、燃やされてしまったら返事をもらえないじゃないか」

なまえの行動に驚いて声を荒げたものの、ポルナレフは数秒で冷静を取り戻し、肩を竦めた。
なまえはそんなポルナレフを見上げ、口を開く。

「返事…?アヴドゥルに負けたら渡せないのに、書いたって意味ないでしょう」

「……言ってくれるじゃあないか。いいだろう。全員おもてへ出ろ!順番に切り裂いてやる!」

ポルナレフから距離を取りつつも、ポルナレフに続いてなまえたちは外へ出て行く。
そこはだだっ広い庭園で、様々な石造などが至る所からなまえたちを歓迎する。

「ここで予言をしてやる。まずアヴドゥル…きさまは…きさま自身のスタンドの能力で滅びるだろう…」

アヴドゥルを振り返ったポルナレフが、勝ち誇ったようにアヴドゥルを指差した。
その言葉にアヴドゥルは目を細めるものの、手を貸そうとした承太郎の名を呼んで、一歩前へ出る。
ポルナレフの言うとおり、アヴドゥルの『スタンド』はこれだけ広い場所なら思う存分操れるだろう。
ポルナレフとアヴドゥルの戦闘はすぐにでも始まったが―――アヴドゥルに有利と知っていながらも外へと出たポルナレフに警戒して、アヴドゥルはなかなか炎を出せないでいた。
しかしそれを煽るかのように、ポルナレフはアヴドゥルへと攻撃の手を強めていく。
申し訳程度にアヴドゥルは炎を操るがそれはポルナレフのスタンドに弾かれ、そして。

「ああ!」

「!?」

その弾かれた炎は、いつの間にかアヴドゥルの近くに出来ていたスタンドの姿にそっくりな石像に当たり、炎の衝撃でその石像にヒビが入る。

「野郎ッ!こ…こけにしているッ――突きながら『魔術師の赤マジシャンズレッド』にそっくりの像をほってがった!」

「なかなか…クククク……この庭園にぴったりマッチしとるぞ『魔術師の赤マジシャンズレッド』」

ポルナレフの言葉と同時、アヴドゥルの纏っていた雰囲気がガラリと変わった。
それに呼応するかのように、アヴドゥルのスタンドもさらに力強く、アヴドゥルの背後へ君臨する。
その空気にポルナレフは笑うのをやめ、真剣な眼差しでアヴドゥルを睨みつけた。

「来るな…本気で能力を出すか…おもしろい…うけて立ってやる」

対峙する二人の少し離れた場所。
身を乗り出してアヴドゥルたちの戦闘を見ていたなまえであったが、後ろにいたジョセフがそっとなまえの肩に手をおく。
なまえはゆっくりとジョセフを振り返り、どうかしたのかとじっと見上げた。

「なまえ。なにかに隠れろ。アヴドゥルの"あれ"が出る…とばっちりでヤケドするといかん…」

「……"あれ"?」

ジョセフの言葉に首を傾げながら、忠告どおりになまえは後ろへ数歩下がり、大きな岩陰に隠れ、顔だけを出して様子を見る。

「クロスファイヤ――――!」

ぼおおお、と炎が燃え上がり、岩陰から出ていた顔が熱くなり、なまえは咄嗟のことに顔をしかめた。
そして燃え上がった炎は十字架を形作ると、その巨大な十字架はポルナレフめがけて飛んで行く。

「ハリケーン!!」

数メートルは離れているであろうなまえでも耐えるのが辛く思えてくる炎。
しかし、ポルナレフは全てを焼き尽くそうと襲ってくる炎に怯むことなくスタンドで立ち向かう。

「これしきの威力しかないのかッ!?この剣さばきは、空と空の溝をつくって、炎をはじき飛ばすといったろーがアアアアア―――――ッ!!」

なまえは、ポルナレフのスタンドの剣さばきを、目で追うことが出来なかった。
しかし何度も鳴る空を斬る音と無傷の銀の戦車シルバーチャリオッツを見て、ジョセフたちは息をのむ。
悲鳴をあげたのは、ポルナレフではなかった。
炎を操るはずの魔術師の赤マジシャンズレッドが、自分の炎に焼かれ、その痛みに悲鳴をあげているのだ。

「ふはは。予言どおりだな。自分の炎で焼かれて死ぬのだアヴドゥル…」

スタンドが燃やされる痛みに蹲りながら、アヴドゥルは声もなくスタンドをポルナレフへと差し向ける。
しかし、ポルナレフは余裕の笑みでそれを迎え討った。

「やれやれ、やれやれだ!悪あがきで襲ってくるか、見苦しいな」

ドシッ、という鈍い音と共に、ポルナレフのスタンドが向かってきたアヴドゥルのスタンドを真っ二つに切り裂いた―――ように思えた瞬間だった。
燃え盛る炎に焼かれ、銀の戦車シルバーチャリオッツは悲鳴を上げる。
銀の戦車シルバーチャリオッツが真っ二つに切り裂いたと思ったのは、先ほどその剣さばきで作成した石像であった。

「ばかな、炎だ!切断した体内から炎が出るなんて!!」

「あれは人形だ。スタンドではない……人形だ!」

ポルナレフは自分の身体に与えられたダメージに動揺し、その揺れる瞳で地面に横たわる石像を見下ろす。

「炎で目がくらんだな。きさまが切ったのは、今さっききさまの『銀の戦車シルバーチャリオッツ』が彫った彫刻の人形だ!わたしの炎は自在と言ったろう。おまえがうち返した火炎が、人形の間接部をドロドロにとかし動かしているのだ。自分のスタンド能力にやられたのはお前のほうだったな!そしてわたしのクロスファイヤーハリケーンを、改めて」

瞬間、炎が立ち昇り。

「くらえッ!!」

今度こそ、銀の戦車シルバーチャリオッツはその炎に包まれる。

「占い師のわたしに予言で闘おうなどとは、10年は早いんじゃあないかな」


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