そのまま承太郎のスタンドは、ギリギリとその手に力をこめていく。
そしてこのまま花京院は気絶すると思われたが―――ボド、ボド、と何か重量のある液体が地面へと落下した。
承太郎もそれに気付き、花京院のスタンドの手から落ちていく緑色の液体を睨みつける。

「くらえ。我がスタンド法皇の緑ハイエロファント・グリーンの…」

「花京院!妙な動きをするんじゃあねぇ!!」

木製の操り人形が、静かに音を鳴らした。

「エメラルドスプラッシュ!!」

体液が固まったようなそれが、大量に承太郎のスタンドへと襲い掛かる。
そのスピードと、花京院のスタンドを捕まえていたこともあって反応が遅れ、承太郎のスタンドはその攻撃をもろにくらってしまった。
その勢いが承太郎にも伝わり、壁へ思いっきり叩きつけられる。
承太郎の口から血が溢れ出るが、叩きつけられたダメージだけのせいではない。
先ほどの攻撃の威力はそのスタンドを通じ、承太郎の身体へダメージを受けさせていたのだ。

「エメラルドスプラッシュ。我がスタンド『法皇の緑ハイエロファント・グリーン』の体液に見えたのは破壊のエネルギーのヴィジョン!きさまのスタンドの胸を貫いた…よって、きさま自身の内臓はズタボロよ」

ようやく窓から降り、花京院は保健室へと足を踏み入れる。
その背中にはスタンドが浮き上がり、承太郎はそんな花京院を睨み上げた。
しかし花京院は承太郎から視線をずらし、地面に寝かされていたなまえをじっと見つめる。

「そして、そこの彼女も」

そう言った瞬間、なまえの口から承太郎のように大量の血液が吐き出された。
げほ、がほ、と吐き出される血に、承太郎は驚いたようになまえを見つめる。

「な…なにィ〜」

「言ったはずだ。わたしの『法皇の緑ハイエロファント・グリーン』に攻撃を仕掛けることは、彼女を傷付けることだ…わたしの『スタンド』はきさまのより遠くまで行けるが広い所は嫌いでね。かならず何かの中に潜みたがるんだ」

花京院は、血を吐くなまえをなんとも思っていないかのように承太郎へと向き直った。
なまえに血を吐く以外で動く気配は無かったが、その血液は止まる気配が無い。

「ひきずり出すと怒ってしまう…だから、のど内部あたりを出るときキズつけてやったのだ。おまえが悪いのだジョジョ。おまえの責任だ。これはジョジョ…おまえのせいだ。おまえがやったのだ。最初からおとなしく殺されていれば彼女は無傷で済んだものを…」

しかし、その責めるような言葉を受けても尚、承太郎は立ち上がる。
その背中に気迫を背負い、負けてなどいないと花京院を睨みつけて。

「立ちあがる気か…だが悲しいかな。その行動をたとえるなら、ボクサーの前のサンドバッグ…ただうたれるだけのみ立ち上がったのだ」

カチャカチャ、と人形が音を鳴らす。
承太郎は、スウウと戦闘態勢に入り、そんな人形など目に入ってすらいないかのように口を開いた。

「……この空条承太郎は…いわゆる不良のレッテルをはられている…ケンカの相手を必要以上にブチのめし、いまだ病院から出てこれねぇヤツもいる…イバルだけで能なしなんで気合を入れてやった教師はもう2度と学校へ来ねぇ。料金以下のマズイめしを食わせるレストランには代金を払わねーなんてのはしょっちゅうよ」

だが、と承太郎は拳を握りしめる。

「こんな俺にも、吐き気のする『悪』はわかる!『悪』とはてめー自身のためだけに弱者を利用し踏みつけるやつのことだ!」

承太郎は、怒りをそのまま叫びへと変換した。
自分の内臓がズタボロだと言われた今、あまり動かない方が懸命ではあったが―――しかし承太郎はそうはしない。
まるで怪我など一つもしていないというように、今度は花京院を睨み見下ろした。

「ましてや女をーっ!きさまがやったのはそれだ!あ〜ん。おめーの『スタンド』は被害者自身にも法律にも見えねえしわからねぇ…だから、おれが裁く!」

ピシュッ!、とずれた帽子を直しながら、承太郎はスタンドを出して花京院を威圧する。
しかしそんな承太郎の覇気は痛くも痒くもないのか、花京院は涼しげな笑顔を浮かべていた。

「それはちがうな」

そして、静かに承太郎の言葉を否定する。

「『悪』?『悪』とは敗者のこと…『正義』とは勝者のこと………生き残った者のことだ。過程は問題じゃあない。敗けたやつが『悪』なのだ」

再び、花京院のスタンドが構えを変えて。

「とどめくらえ!エメラルドスプラッシュ!!」

しかし、先ほどとは違って承太郎は花京院の攻撃を前に余裕たっぷりに「敗者が『悪』」と、花京院の言葉を反復した。

「それじゃあー」

手をポケットにつっこみ、余裕の笑みを浮かべて。

「やっぱりィ」

承太郎のスタンドが、花京院のスタンドの攻撃の前へ出た。

「てめーのことじゃあねーかァ―――ッ!!!」

「なにィ〜!バカな!エメラルドスプラッシュをはじき飛ばしたッ!」

目にも止まらぬ早さで承太郎のスタンドは攻撃をはじき飛ばし、そのまま法皇の緑ハイエロファント・グリーンの首を掴んで、バキボキという鈍い音がするまで握りしめる。
自身のスタンドを傷付けられた花京院は、静かに口から血を吐き出した。

「オララララオラ!裁くのは、おれの『スタンド』だーッ!!」

スタンドが法皇の緑ハイエロファント・グリーンを殴り飛ばし、花京院が持っていた操り人形の糸がブチン、と切れる。
瞬間、花京院の身体の至る所から血が噴出した。

「な………なんてパワーのスタンドだ」

ゴオーッ、という物凄い音と共に保健室が崩れ、花京院も同時に床へと倒れこむ。
糸が切れた人形は、瓦礫の隙間で何を思うでもなく横たわっていた。


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