空条承太郎は4日ぶりに学校へ登校しようとしていた。
歩きながら、この4日間のことを思い出す。
祖父であるジョセフ・ジョースターが自分の背後にいた"スタンド"というものについて自分に教えるためにわざわざニューヨークからこの日本に来たのだという。
そして"スタンド"について教えられる際、彼は重要な人物の名を口にした。
DIOというその名は、ジョースター家と深い因縁があるという話であった。
既に自分の姓はジョースターではないものの、自分もしっかりとその血を引いている。
今から4年前。鉄の箱がアフリカ沖大西洋から引き上げられ、そのブ厚い鉄の棺桶―――しかも100年前のだという―――を祖父であるジョセフは回収した。
しかし中身は空――――それでも、ジョセフには中に何が入っていたのかがわかると言った。それこそが、邪悪の化身であるDIOであると。

「……………………」

百年を生きる、謎の男。
そのことを考え、触られているわけでもないのに自分の首の後ろにある星のアザが何故だか気になった。

「ジョジョー!」

「キャー!ジョジョ!」

「やかましいッ!うっとぉしいぞォ!!」

いい加減思考の邪魔だと周りの女共を承太郎は怒鳴りつけるが、それも無意味とでもいうように彼女達はキャーキャー嬉しそうにしている。
まあそれもいつも通りのことなので、舌打ちしたい気持ちを抑えてから再び前を向いて歩き出した。
そのままいつも通り目の前の石段を降りて、学校に向かう―――はずだったのだが。

「なにィ!?」

「きゃー!ジョジョー!!」

女子生徒の悲鳴の種類は変わり、それは驚きのものへと。
承太郎はヒザに激痛が走り、その衝撃で195cmもの身体が宙に浮く。
下は固い石段。もしこの高さから素直に落下すれば、いくら頑丈な身体をしているとはいえかなりの重傷だろう。
最悪、死んでしまうかもしれない。

「うおおおおおお!!」

咄嗟にスタンドを出し、近くの枝を掴んで着地点をズラした。
それでも無傷とはいえなかったが、木の枝がクッションとなり重傷は免れる。
焦ったように悲鳴をあげた女子生徒たちは承太郎の元に駆け寄るが、今承太郎にそんな彼女達を気にかけている余裕はなかった。

「(左足のヒザが切れている…)」

血が噴出すヒザを見下ろし、承太郎は今何が起こったのかを冷静に考える。

「(木の枝で切ったか?…い…いやちがう…落ちる前に切れていたッ…だから、石段をふみはずしたのだ…たしかだ…)」

承太郎の周りを女子生徒たちが心配そうに取り囲むが、承太郎は今の不可解な現象に慌てて辺りを見渡した。
これがいつも通りの日常ならこんなに警戒することはなかったが、つい先日祖父からDIOについてのことを聞いたばかりである。
ふと、軽快な足音が聞こえてそちらへ視線を向けた。

「!!」

それは一瞬のことであった。
一人の女子学生が承太郎たちの横を通り過ぎるときのこと。

「(あいつは………確か)」

承太郎はその女子学生の顔を覚えていた。
喋ったことは数回しかなかったが、去年も同じクラスだったのだ。

「(名字………?)」

一瞬目が合った女子生徒は確かそんな名前だったと、驚いたようにこちらから目を逸らした女子生徒の後姿を目線だけで追う。
緩やかとはいえないこの階段を駆け下りていく彼女は、なんだか慌てたように階段を降りていったように思えた。

「お…………」

い、とその背中に声をかけようとして、スッと目の前に出てきた一人の男子生徒に承太郎は口を閉ざしす。
見覚えのない男子生徒を警戒するように、承太郎はじっと少年を睨みつけた。
しかし彼は承太郎の目線に怯むことなく静かにハンカチを差し出した。

「君…左足を切ったようだが……このハンカチで応急手当をするといい…」

じっと男子生徒を見つめていたものの、承太郎は黙ったまま彼からハンカチを受け取る。

「………大丈夫かい?」

「………………ああ…掠り傷だ」

その言葉を聞くと、男子生徒は用は済んだとでもいうように承太郎へ背中を向けた。
承太郎はその背中を見ていたものの、「待て」と今度こそ声をかける。
すると男子生徒は立ち止まり、まるで声をかけられるのを待っていたかのようにゆっくりと振り返った。

「ありがとうよ。見ない顔だが………うちの学校か?」

「花京院典明。昨日転校してきたばかりです。よろしく」

男子生徒はそう名乗ると、今度こそ学校への道を歩き出す。
承太郎は自分に背を向けて歩き出すことに躊躇が無い花京院の後姿をにらみつけたまま、何かを考えるように受け取ったハンカチをポケットへ仕舞った。


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