「『あ、100円みっけ』」
なんだ僕ってばついているなあ、と名も知らぬ誰かの病室前で寂しそうに落ちていた百円玉を拾う。
「『うーん。何飲もうかなあ』」
特に喉も渇いていないし、と百円玉を宙に飛ばす。
「『って、あ!』」
受け取るのに失敗した僕はその百円玉を地面に落としてしまった。
まったく、と溜息をつきながら拾おうとしゃがんで。
自分の足で百円玉を蹴飛ばし、目の前の病室の中へと扉の下から入っていってしまった。
「『…………………』」
百円玉を取りに他人の病室に入りたい気分ではなかったため、諦めて立ち上がりその扉を見つめて。
「『僕からのお見舞いだ。有り難く受け取るんだな』」
無駄に格好付けて、颯爽と帰宅した。