「なるほど十一組の子、ねえ……」
「鍋島猫美っちゅー名前があんねん!あんた黒神言うたか?十一組の子なんていう呼び方やめてえや」
「鍋島さんはなんで十三組に?」
「え?えええ……あんた、なんやねん」
「え、なんで呆れられたの私」
「なまえちゃんを攻略するのは難しそうだなあ」
「十三組のもんでも苦労すんねんな」
「え、え、ちょっと何の話」
真黒と猫美が意気投合しているのを不思議そうに見ていたなまえの背後で、教室への扉がゆっくり開かれる。
なまえがゆっくりと振り返ったのを見て、つられたように真黒と猫美がそちらを向いた。
「お。早いなお前ら…」
「おはよう日之影くん」
「おはよう」
「ああ。おはよう。……ん?」
現れた日之影にたいし、なまえと真黒が挨拶をする。
その挨拶に答えながら、日之影はなまえの後に見える人影に気付いたようでそちらに視線を送った。
「あ。あんた昨日の…」
「あ、ああ。昨日は助かった」
「おやおや日之影くんはなまえちゃんに限らず十一組の子までも…」
「俺のキャラを変な風にするのはやめてくれないか…」
真黒の発言を受けて、日之影は顔を少しだけ赤くして小さく溜息をはく。
そして首を振り、なまえ達を見下ろした。
「少しこの校舎内で迷ってしまってな。偶然通り過ぎた彼女に道案内を頼んだんだ」
「そうゆーこっちゃ!しかしなんでやろ…今までそのこと忘れとったわ」
「………道案内くらい印象に残らないだろう?」
「んー。まあそうやな。あんた以外にも何人かに道訊かれたりしよったし……ちゅーかあんた十三組やったんか!?」
突然何かを思い出したように声を荒げた猫美に、なまえは驚いたように猫美を見た。
しかし猫美はそんななまえを気にせず、驚いた表情を浮べたまま日之影を指さしている。
「ああそうだが……ん?もしかしてお前も十三組か?」
「いや、十一組やけど……なんやねん、三対一か………今日はこの辺にしといたるわ。ほなな!」
そのまま猫美は教室から慌てて出て行くと、こちらを振り返ることなく走り去って行ってしまった。
「一体なんだったんだろうね?鍋島さん」
「んー。そうだね」
日之影が開きっぱなしのドアを閉めている間になまえは地面に落ちていた自分の鞄を拾い、疑問を口にする。
真黒はそんななまえの疑問に、自分の席に座りながら考えを口にした。
「とりあえず僕がなまえちゃんに言えることは、もう少し他人に気をつけた方がいいよってことくらいかな」
「真黒くんが言うと説得力があるね」
「あはは。ありがとう」
「黒神お前多分それ褒められてないぞ」
日之影が呆れたように呟いたところで、始まりのチャイムが鳴り響いた。