(鶴喰鴎)



「聞いてくださいよなまえ先輩。そいつ、SQジャンプのことばっかり話してくるんですよ。そんなやつと友達になれって方が無理な話じゃないですか」

「…あはは、」

善吉くんが珍しく私なんかに話を聞いてくれと言ってくるから何事だろうと思いこうして学食で話を聞いてみれば、最近知り合った人の愚痴だった。
にしてもそんなにその『つるばみくん』とかいう人物はSQが好きなのか。善吉くんがここまで長々と愚痴るだなんてどんな人物なのだろう。絶対に関わりたく無い。

「げ」

善吉くんが愚痴を中断して、その表情が苦虫を噛み潰したような嫌悪感にまみれた表情へとかえる。
何事だろうと思って、視線の先を振り返ったら。

「…………?」

誰もいなかった。

「善吉くん。せっかく友達になれそうだからお昼ご飯を一緒に食べようとしたのにどうして1人で行っちゃうんだい?校舎内を探し歩いたじゃないか。しかも女子と2人で楽しくお食事だなんて。まあ私は恋人よりも友達を優先するから女子と会話なんてする必要はないのだけど」

「え?」

背後から、なんか良い声が聞えてきた。でもこんな声の人、知り合いにいたっけと考えて。きっと善吉くんのお友達なんだろうなとそちらを振り返ろうとする。

「あ、申し訳ないけどそのままこちらを見ずにいてくれると嬉しいんだ。私は女子と面と向かうと固まって動けなくなる」

「ぜひとも一生固まって欲しいもんだ。――なまえ先輩、こっち向いて構いませんよ」

「なまえ、先輩……?」

善吉くんに構わないと言われたので、元の体勢に戻る。
と、いつの間にか善吉くんの隣に見知らぬ誰かが座っていた。
彼は私の顔を凝視したまま、口をぱくぱくとエサを食べる金魚のように動かしている。

「なんだよお前、人と目を合わせて喋れないって本当だったのか」

「善吉くん、彼は?」

彼から目をそらして、善吉くんを見る。
もう2人とも既に食事は終えていたのだが、新しく現れた彼はどうやら今から食事をするらしい。購買で買ったであろうパンが、彼の前に置かれていた。

「鶴喰鴎。さっき言ってたSQ好きの奴ですよ」

「ななななな何を言うんだ善吉くん!私はSQだろうがジャンプだろうが少女漫画だろうがなんだろうが全部好きだぞ!」

「あ?なんだお前、この前と言ってることが―――」

「なまえ先輩が好きな漫画は私も好きですよ!」

「え?う、うん…私は少女漫画は読まないけど……」

「ああですよね私も読みませんよ!」

「お前どうしたんだよ…」

善吉くんが眉間に皺を寄せて、鶴喰くんを見る。
だけど鶴喰くんはじっとこちらを見つめていて、善吉くんの方に見向きもしていなかった。
うーん、どうやら善吉くんに聞いていた印象とだいぶ違うような気がする。

「何故でしょう私なまえ先輩となら目を合わせても喋れますというか目が離せ無いんですよね靴に惚れたわけでもないのに…ああもう善吉くん、どうして友達である私になまえ先輩と知り合いだと教えてくれなかったんだ。まさか恋人同士とか言わないよね?なまえ先輩に恋人がいないことは調査済みだからそんなことはないと思うのだけれど。とにかく私もなまえ先輩とお近付きになりたいのだから言ってくれてもいいじゃないか私達親友じゃないか」

「なんだよお前今日一段と関わりたく無い雰囲気出してんな。あと俺と先輩は恋人じゃねえし俺とお前は親友でもましてや友達ですらねーだろ。つうかお前、なまえ先輩と友達になりたいってのか?」

「あー、えっと、私は別に構わないけど…」

「友達にはなりたくない」

「ええぇぇ……」

面と向かってきっぱりと友達になりたくないと言われれば、いくらなんでも傷つくぞ私だって。
善吉くんもその発言には驚いているらしく、焦った様子で鶴喰くんを見つめていた。
だけど、鶴喰くんはじっと私を見つめるだけ。
そしていつの間にか私の両手を自身の両手で包み、じっと私の瞳を覗きこんできた。

「私はあなたの恋人になりたい」

君だけを見ていた瞳


(お前さっきと言ってることが全然違うぞ…)
(何を言っているんだ私はなまえ先輩のことを第一に考えるしなまえ先輩しか見てないしなまえ先輩のことならなんでも知ってるぞ)
(善吉くんの友達ってなんていうか個性的だね)
(その哀れむような目やめて下さい)
(そうですよなまえ先輩、私だけを見ていて下さい)



――
鶴喰くん夢をというリクをいただいたので靴が主食の(違)鶴喰くん!出番がまだ全然なのでキャラがわからずなんだか変態ちっくなキャラになりましたがそんな鶴喰くんも好きだ。ということで、リクエストありがとうございました!


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