(阿久根高貴)(球磨川禊)


「トリックオアトリートってことで、お菓子頂戴」

「名字三年生。その格好は…」

「はんっ、露出したって黒神めだかよりスタイルよくないのはわかってますから。まったく、ボン、キュ、ボンって……最近の子って発育良すぎない?」

「それはアタシへの侮辱ですか?」

「不知火ちゃんもお菓子貰いに来たの?」

「ええ。勿論。今日ほどアタシにピッタリな行事は無いでしょう」

こんな光景を目の当たりにした黒神めだかと球磨川禊以外の生徒会3人は目を丸くした。
制服を着て魔女のような帽子だけをかぶった不知火半袖と、制服の上からミイラ男のように包帯をぐるぐると巻いている名字なまえ。
そんな2人が会長の席に座っている黒神めだかへとお菓子を貰いに来たというのだから、3人の反応は正常といえよう。

「『なまえちゃん……』」

「あれ、球磨川くんどうかした?」

声を震わせ、たどたどしく球磨川禊がなまえへと近付く。
名を呼ばれたなまえはくるりと振り返る。
その衝撃で、顔に巻いていた包帯がぱらぱらと肩へ落ちるのも気にせず。

「『なんで裸エプロンじゃないのおおおおおおお!?』」

「誰が着るかああ!!」

半泣きの状態でなまえに抱きつく球磨川に、そう反論するなまえ。
黒神めだかは呆れたようになまえにくっつく球磨川を引き剥がし、携帯でどこかへかけている。

「めだかちゃんに貰わずに、真黒さんに貰ったらいいじゃないですか」

「真黒くんはお菓子くれなさそうだし」

「(確かにあの人ならイタズラを選びそうだ……)」

「『包帯巻いてるだけだなんて!色気もへったくれもないじゃないか!…いや、でもよく考えてみれば包帯は包帯でありかもしれないな』」

「何言ってるんですか球磨川さん……」

「ハロウィンかー、私はお金が貰いたいなあ」

「不知火。名字三年生」

電話を終えためだかに名前を呼ばれ、2人は球磨川達から視線をめだかへとうつす。
半分呆れたような顔をしたあと、黒神めだかは大きく息を吸った。

「何ですかその仮装は!仮装するならもっとちゃんとするべきです!今から衣装を用意しますので着替えてください!!」

「えっ…いや、そんな本格的じゃなくても……」

「『え?なまえちゃんやっぱり裸エプロンにするの?』」

「球磨川は黙っていろ」

めだかに殴られ、球磨川は目を回しながら地面へと倒れる。
そちらを心配したいなまえではあったが、めだかに気圧されて足を後へ一歩後退させることで精一杯であった。

「善吉、阿久根書記、2人を拘束しておいてくれ」

「えっ……でも」

「いいから!」

「は、はいっ!」

戸惑っていた2人ではあったが、逃げようとする不知火を善吉が食べ物でつってその場に留まらせていたので、阿久根も渋々なまえの前へと立ちはだかる。

「あはは、阿久根くん。そこをどいてくれないかな?」

「めだかさんの頼みなもので。それに、あなたのちゃんとした仮装も見てみたい」

「そう言わずにさっ、った!?」

「おっと」

隙を見てドアへと逃げ出そうとするなまえを、その身体に巻かれた包帯を掴んで動きを止める。
はずだったが、勢いに任せて引っ張ってしまった包帯は結構な力で引っ張られたらしく、なまえはバランスを崩し後へ倒れそうになってしまう。
だが。

「う、わあ」

流石阿久根高貴というべきか、きちんとなまえを受け止めてその場に立っていた。

「あ、ありがとう…」

「いえいえ。礼には及びませんよ」

「というか、離して欲しいんだけど…」

「それはきけないお願いですね。さっきも言ったとおり、俺も、そして球磨川さんも、もしかしたら人吉くんもあなたの仮装を見たがってますから」

「そ、そこのカボチャでもかぶるよ」

「ダメです」

じ、っとこちらを見るめだかの机の上に置かれたジャック・オ・ランタンを後手に指差してなんとか逃げようとするが、阿久根はそれを許さない。
そして抵抗が激しくなってきたなまえの耳元に口を寄せて、低く「それに、」と囁いた。

「オレ、寝技って得意なんですよ?」

カボチャは見ていた


(それイタズラっていうか私死んじゃう)
(『何?寝技?僕もまぜてよ』)
(球磨川さんが言うとなんだか嫌な感じですね)
(確かに)
(『理不尽だ!』)


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