予想通り、というか予想よりは少し遅めの出来事だった。

「なんで学校来てるの?」

それ以外に聞きたいことはないのか、となまえは呆れた。
誰もかれもが同じ言葉しか口にしないので劇みたく台本でも用意されていて誰が一番その言葉を口にするのが相応しいのか練習でもしているのだろうかとなまえはそれを想像する。
想像してから、まさかそんな馬鹿馬鹿しいと自分に突っ込みをいれて目の前の女の子へと意識を戻した。

「あなたが学校に来ない時期は、世界中のどこよりもここは平和だったのに」

うわー、厨二病くせー、だなんてそんなことは思ってもいないし言ってもいない。
世界中のどこよりも平和?あんたの頭の中が一番平和じゃねーよ、1人で見えない敵と戦っていればいいのに。

「どうして歓迎もされてないのに学校に来たの?」

その口調は優しくもあったが、決して心を許している声音ではなかった。
今ならまだ怒りませんから早く言ったほうがいいですよ、と悟されているみたいでなんだか気分は良くない。
怒らないから言ってごらんと言って怒るんだ。予定調和みたいに。

「学校なんてサボらずに、これからは真面目に生きようと思ったから」

そう無表情で答えれば、女の子は少しだけ驚いたように目を見開いてから、笑い声をこぼした。
何かそんなに面白いことを言っただろうか?もしかしたら最近の子の笑いのツボについていけていないのだろうかとなまえは心配するが、そうではない。

「あんたが真面目に生きようが不真面目に生きようが、社会で生きられるわけがないのにね」

頭の中が平和じゃないくせに、なんとも的を得たことを言う子だった。
そしてなまえは別に自分の言葉を求められているわけではないと判断して黙り込む。
それに気をよくした女の子が、勝ち誇ったように言葉を続ける。

「それにね、あなたは学校に来てなかったから知らないかもしれないけど糸島くんは二音のものなの。だから関わらないでくれる?それとも、糸島くんが自分に気があるとか勘違いしてたり?」

「あー、へえー、そうなんだ。知らなかった。善処するよ」

軍規が自分に好意をもっているわけがないし、2人がそういう関係だというのも初耳だ。
だからといって別になんとも思わない。
なまえは自分から軍規にも奈布にも話しかけたことはないのだ。
それは2人に関わらず、クラス全員に言えることであるが。

「じゃあ、もう明日から学校に来ないでね」

「え?ごめんよく聞こえなかった。それじゃあまた明日ね」

後ろで女の子が何か叫んでいるが、宿題をやろうと足をはやめるなまえには聞こえない。
ばいばいまた明日、楽しくもつまらなくもない学校でお会いしましょう。


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