そして次の日も、なまえはちゃんと学校へと登校していた。
まとわりつく視線を気にせずに自身の席へつくと、スタスタと迷いなく、1人の女の子がなまえへと近付いてくる。
なんだろう、となまえはそちらへ視線を向けた。
昨日、隣の席の糸島軍規に話しかけていた女の子だった。

「名字さんさ、アタシと席交換したほうがいいわよ」

おはようの挨拶も無しに、女の子はなまえへ突然の席替えを要求してきたのだ。

「今まで散々学校休んでたじゃない。だったら、一番前の真ん中で授業受けたほうがいいと思うの」

「……………………」

女の子の言葉の意味がわからなかったのか、なまえの反応は無い。
ただ黙って、女の子の顔を凝視するだけだ。

「それに、隣の軍規だってあなたみたいな子の隣の席だったら迷惑だと思うし。あなたよりアタシが隣の方が、きっと喜ぶと思うの」

「………えーっと、」

なまえは困惑したように目を泳がせ、口を開く。

「なんで?」

ツーサイドアップにした髪が揺れる。
女の子は相変わらず笑顔で、それでいてとても可愛い。
そんな女の子と話せるのはありがたいことだが、何故こんなにもつっかかってくるのだろうかと疑問に思う。
前までは睨まれることはあっても話しかけられることなど無かったのに。

「だってあなた、気持ち悪いじゃない」

その言葉は、教室にざわめきを広げさせるには十分だった。
今まで静かにこの会話を聞いていた教室の生徒が、一気にざわめきだす。
だけど女の子はそんなことを気にせず、むしろそれが目的だったとでもいうように、綺麗に笑みを浮べた。

「生きているだけでも迷惑なのに、一緒の教室にいるだけでもたえられないの。でもアタシ達はずっとあなたと同じ中学だったからまだ慣れてるけど軍規は転校したての子だから、そんな子の傍にいさせるのは可愛そうでしょ」

なまえは、既に女の子の言葉に興味を持っていなかった。
なんだそんなことか、と呆れたような顔をしていた。
もっと大きな理由だと思ったのに、やっぱりこの子もそうなのか、と期待していた答えとはほど遠い答えが戻ってきてがっかりしたようだった。
そして静かに立ち上がる。
その行動に、女の子が少しだけ脅えたような表情をしたが、なまえはそんな表情すら見ていなかった。

「いいよ。席、交換しよっか」

何の未練もなくなまえは手にしていた鞄を持って一番前の真ん中の席へと足を進めていた。

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