午前の授業が終わり、お昼の時間が来るまで結局教室にいたのは私を含めた3人のみだった。
みんな学校に行かずに何をしているのかとか暇じゃないのかなとか考えたが、13組というのはどうやら変人の集まりらしいので(黒神くんがそう言っていたが、日之影くんはわりと普通な気がする)別に学校に来なくても暇をつぶせているのかもしれない。
だけどやはりワイワイと騒ぐクラスを想像したりしていたので、少し寂しくはあった。

「なまえちゃんのお弁当おいしそうだね。自分で作ってるの?」

「うん。黒神くんは誰かに作ってもらってるの?」

「そうだよ」

聞けば、黒神くんはあの黒神グループの長男だという。
世界を担う黒神グループと言われれば、それを知らない者などそういない。
  ・・・・・・・・
彼がそういうグループの長男であるならば、彼ほどここに登校してくるのが不相応な人間は居ないだろう。
その黒神グループを発展させるための勉学はとっくにしているだろうし、そのような勉学をした彼が、高校レベルの授業などとうの昔に終えているはずだからだ。
小学生の頃だろうか?それとももっと幼かった頃だろうか。
それを私に知る術などないし、知ったところでどうということもない。
私は口の中に含んだ卵焼きを飲み込むと、次は日之影くんの方を向いた。

「日之影くんは、購買?」

「いや、朝ここに来る途中にコンビニで買ってきた」

「へえ。そのパン美味しいの?」

「ああ」

「じゃあ今度買ってみようっと」

対して、日之影くんはビニール袋に入っている5,6個のパンをひたすら食べていた。
やはりここまで大きな体格となると、食べる量も違うのだろう。
私は2個くらいで限界だが、日之影くんともなると5,6個であろうと足りない気がしてくる。
そう考えると、購買で買うよりコンビニなどで買ってきたほうが数の調達はしやすい。
きっと購買は人で溢れかえっているのだろうから、そんなに大量に買うのは難しいだろう。

「名字の弁当も、美味しそうだな」

パンを食べながら、日之影くんがそうやって私のお弁当を褒めてくれた。
それが先ほど言ったお返しだとわかってもなんだか嬉しくて、笑みをこぼした。

「卵焼き、一個食べる?」

「え?」

「はい、あーん」

自身の箸でまだ弁当箱に残っている卵焼きを優しく掴み、箸を持つほうとは逆の手を下に添えながら日之影君へと差し出した。
日之影くんはパンを食べようと口を開けたまま、唖然とした表情でその卵焼きを見つめている。
まさか私が自身の食べ物をあげるとは思っていなかったのだろうか。
そんなケチな人間に見られていただなんて、少しばかりショックなのだけれど。

「あ、え、い、いや…だ、大丈夫だ」

「え?もしかして卵焼き嫌いだった?じゃあ唐揚げは?」

しどろもどろに拒否されたので、私は卵焼きを弁当箱の中に戻してその隣に存在していた唐揚げを端で掴もうとする。

「い、いや、名字はその…しっかり食べた方が、いい」

「なまえちゃん、僕にはくれないのかい?」

「豪華なお弁当を持っている黒神くんにはあげませーん」

「日之影くんが羨ましいねえ」

「あのなあ……」

心なしか日之影くんの顔が赤い気がするが、食事をすると体温があがるのでそのせいだろうと差し出そうとした唐揚げを自分で食べる。
最近の冷凍食品は進んでいるのか、冷凍されていた唐揚げをレンジでチンするだけでこんなにも美味しいものが出来るだなんて、と感心した。
有名なあのゲームの名台詞を借りるなら、そう。
かがくの ちからって すげー!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -