いちにちめ。
おともだちはできなかった。
ふつかめ。
おともだちはできなかった。
みっかめ。
おともだちはできなかった。
よっかめ。
わたしのつくえといすがなかった。
おともだちはできなかった。





×





目の前で泣いている男の子と、そのお母さんらしき人と、担任の先生が私を見る。
何か喚いているが、同時に喋られても私には聞き取れない。
私はただ、漢字を書く練習をしていただけなのに。
難しい漢字も書けるようになった私は、もう小学四年生になっていた。
小学校に入学して以来、病院にはもう行っていない。
おじさんとおばさんも私に会うことは少ない。
いつものように傷だらけのランドセルをロッカーから引っ張り出し、中につまっているゴミをゴミ箱へと捨てる。
小学四年生にもなってゴミ箱と他人のランドセルの区別がつかないなんて、もっとちゃんと勉強したほうが良いのにな、と思いながら引き出しの中の教科書をしまう。
教科書の格ページには落書きがかかれていて、カッターで切り刻まれたようなあともあり、読めないページもある。
復習だってするのだから、こういうのは困るのにな。
かといっておじさんやおばさんに再び教科書を買ってもらうわけにもいかないし。
とりあえずまだ無事なシャーペンとノートをランドセルにいれた。
席近くの壁や、自分が使っていた机の足などに貼られている「死ね」「学校来るな」などの紙をどうしようかと首を傾げ、とりあえず捨てるか、と全部はがしにかかる。
硬いコンクリートの壁に画鋲で貼られているわけもなく、セロハンテープだったので簡単にとれる。
それらをくしゃくしゃにまるめてゴミ箱へ捨てた。ボッシュート。
最近の子供はゴミを捨てることもしらないのか。ダメだなあ。

「先生、終わりました」

職員室の扉を開き、担任の先生の元へと駆け寄る。
先生は困ったような顔をして、「わかったから帰っていいぞ」とノートを見るまでもなく私に帰宅許可をくれた。
私は「失礼しました」と職員室を出て、そのまま帰るはずだったのに。
男の子が私の靴を奪って、走り出しただけなのに。
勝手にその子がガラスにつっこんだだけなのに。
なんで私はまだ学校にいるんだろう。

「とぼけたような顔して!全く反省してないじゃないの!!この糞ガキ!」

「どうなんだ!?お前がこの子を突き飛ばしたのか!?」

何をそんなに怒っているのかがわからない。
ぎゃーぎゃーとわめく2人と、手当てを受けた手で涙をふきながら号泣する1人。
空気を読んで私も何か騒ぐべきだろうか。

「あんたが悪いんでしょ!うちの子に謝りなさいよ!」

男の子は一向に泣き止まないし、大人はうるさいし、早く帰りたい。
私の言葉を求めてるのなら、最初からそういえばいいのに。

「私は悪くない」

殴られた。
慌てて先生が再び殴りかかろうとしてくる親を止めにかかったが、親は私を殴りたくて仕方ないらしい。
殴りたいなら殴らせておけばいいのに。
そんなことしたって、世界は何も変わりはしない。

「それじゃあ」

私はおうちに帰って宿題と予習をしなくちゃいけないんだ。
小学生だからって、勉学を怠るようなことはしない。

「待ちなさい!!まだ話は終わって―――」

「いいえ私は終わってます」

千二百七十五日目。
おともだちはできなかった。



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