「三年って…」
「年上じゃないか」
十三組というよりは、2人はソチラの方に反応していた。
まさか学校に来ている三年十三組がいるとは思っていなかったのだろう。
なまえが平然と当然のように登校してきているのは学園内では有名だ。しかし彼らもまた十三組。
登校してきたとしても時計塔にいる彼らに、そんな情報は入ってこなかった。
「そういえば、6桁の暗証番号って言ってたけど」
なまえの視線が、目の前の2人からその後ろにある厳重な扉へ向く。
真ん中にこれ見よがしにある機械。
彼らがいう事が本当ならば、それに正しい番号を入力すればこの厳重な扉が開く仕組みなのだろう。
2人は驚きを仕舞い込み、門番の仕事へと戻る。
「さっきも言った通り、ここを通れる確立はかなり低い」
「さっきも言った通り、十三組だとしてもただの異常じゃ通ることはできない」
2人はそれだけ言うと、扉の前から同時にどいた。
なまえに数字を入力しろと言っているのだろうか。
「……………………」
なまえは静かに機械の前へと歩いて行く。
決められた数字は無い。
毎回ランダムに選ばれる数字を、1つも外さずに当てなくてはならない。
その確率、実に百万分の一。百万人に一人。
それを引き当てるなど――――まさに異常。
「……………………」
なまえは何も考えずに数字ボタンを1つ1つ押していく。
1、2、3……そして6個めの数字。
「……………………」
「……………………」
後ろの2人も、固唾を呑んで見守る。
表示されたのは―――"Error"の文字。
三年十三組である名字なまえは、見事扉に拒絶されたのである。
「まあそう気を落とさないで」
「この扉を開けられるなんてこの学園でもほんの一握りだから」
「どうしてもあけたいなら何度でもチャレンジして構わないけど」
「1回で開けることができないのなら何度やっても結果は同じ」
2人は楽しそうに交互に喋る。
しかしその様子は、心の奥底にあった不安と安堵を押し隠している結果だった。
なまえならば安易にこの扉を開いてしまうのではないかという期待。それと同時にこみ上げる恐怖。
この先に居るどの十三組とも違う。
彼女は――― 一体何だ?
「ハズレ」
「残念」
「今のは惜しかったかも」
「全然違うね」
何度も表示されるErrorの文字。
初めは面白がっていた2人もそろそろ飽き始めたのか、互いに顔を見合わせる。
それでもまだ、なまえに諦めの色は無い。
「もう良いでしょ?」
「開かないことはわかったでしょ?」
そう、なまえに番号入力をやめさせようとする。
なまえも特にこだわりは持ってなかったのか、「そうだね」と3番目の数字を入れたところで息を吐いた。
2人と同様に飽きてきていたのだろう。
というか自分はこの先に行きたいのではなく人を探していたはずだ、とこれで終わりにしようとばかりに残りの数字を入力していく。
そして、表示されるErrorの文字を見ることなくその場を立ち去ろうとした。
「――――――?」
が、その背後で、重い何かが動く音。
「なっ…!?」
「あ、開いた…!?」
門番である2人は驚きの声を上げ、なまえはゆっくりと振り返る。
まさか一度で開かなかった扉が何度目かのチャレンジで開くはずもない――――しかし拒絶の扉は開かれていた。
その硬く閉ざされていたはずの口を開け、中へと異常を招き入れる。
と、声。
「ん?そこにいるのはなまえじゃないか。一体、こんなところで何をしてるんだ?」
扉の向こうには、糸島軍規が立って居た。