なまえは学校から家へと帰る途中、ふとあの不良たちどぶつかった本屋を視界に入れ、何か思い付いたようになまえはくるりと方向転換をした。

「…………………」

不良と言えばゲームセンター、といういかにもな発想でなまえは駅前にあるゲームセンターの中へと入った。
制服姿であるというのに、入ってきたなまえを見ても店員は何も言わない。
小さくはないゲームの音が飛び交う中を、なまえは平然とした顔で歩いていく。
といっても、なまえがゲームセンターへと足を踏み入れるのは今日が初めてだった。
なので何をどうすれば良いのかわからず、辺りをぐるりと見渡す。
UFOキャッチャーに音楽ゲーム、射撃ゲームに格闘ゲームと、バリエーションは豊かなようだ。

「(何やろうかな……)」

財布の中身は確認せずとも、家を出る前に千円札を入れていたので少なくとも百円のゲームなら10回ほど出来る。
だけどゲームをすることなど幼いころに病院で少しやらしてもらったテトリス以来なので、どうしようかとぐるぐる辺りを見渡す。あまり不審な行動をしていたら怪しまれるだろうか、となまえはとりあえず後ろにあった格闘ゲームの椅子へと座った。

「?」

今までガチャガチャとスティックを動かしていた向かい側の人物が手を止めたみたいで、その音が消える。
ゲームを終了したのだろうか、となまえは向かい側に座っているのが誰かを確認しないまま百円玉をその格闘ゲームへと投入した。
今まで戦いの映像を流していた画面がボタンを押してくださいという画面に変わり、なまえはボタンの下に書かれた英語をたどたどしく読みながらボタンを押す。
すると再び画面が変わり、今度はキャラクター選択の画面へと切り替わった。
一通りのキャラクターの絵を見たあと、なまえは適当にスティックを倒しそのまま決定するボタンを押す。
そうやってランダムに選ばれたキャラは、なまえの見た目とは全然違う黒人のマッチョだった。

「……………………」

適当にガチャガチャとスティックやボタンを操作するものの、やはりよくわからない。
1ラウンド負けてしまったなまえは小さく溜息をはいて、あと2ラウンドも残っているというのに席から立ち上がり、先ほど見たUFOキャッチャーの方へと歩いていってしまう。
向かい側に座っていた人物の手の動きが再び止まり、慌てた様子でなまえが座っていた席を覗きこんだ。
だけどそこになまえの影はすでになく、その覗きこんだ少年は残念そうに金色の髪を揺らした。




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