不死身の狼男であるフリーは川へ凍ったまま落下し、5人とも重症ではない。
無事に終わった戦いに、4人はホッと安心をした。
しかし、ナマエの顔から険しい表情は薄れない。
地面にぺたりと座るマカを観察するように見て、眉間に皺を寄せた。
「あれ?ナマエじゃねぇか。こんな所で何してんだ?」
ブラック☆スターに背後から話しかけられ、ナマエは弾かれたように振り替える。
その反応にブラック☆スターは首を傾げるが、ナマエは静かに笑みをこぼした。
「あ、ああ、おはようブラック☆スター。たまたま通りかかったんだよ。お疲れ様」
「おうよ!もうちょっと早く来てたら俺様の活躍を見れたのにな」
「嘘つけ。10秒ももたなかったくせに」
ブラック☆スターが嬉々として言い放った言葉に、ソウルが馬鹿にしたように笑いながら真実を言う。
「うるせー」とブラック☆スターはソウルを睨み付けるが、そのあとすぐ笑みを零し、「俺様はまだまだ成長すんだよ」とガッツポーズをした。
「あ、私急いで帰らないと」
「ん?何か用時でもあんのか?」
「ノイズにご飯あげなきゃ…」
「ああ。そういえば今日はノイズを連れてないんだな」
「うん。ただの散歩だったからね」
「ロンドンまでか?」
「ていうかソウル!」
ずっと会話をしているナマエとソウルに痺れを切らしたのか、マカが声を上げる。
その声にソウルとナマエは同時にマカの方を向いた。
「その子、私にも紹介しなさいよ!」
「ブラック☆スターも、彼女と知り合いなの?」
「ああ!ナマエは俺様の偉大さをよく知っている!」
「そうだっけか…?」
ブラック☆スターの言葉にソウルが苦笑いをこぼすが、その苦笑いは誰に拾われることもなく風に攫われて消える。
マカは立ち上がり、椿の横に並んでナマエの前に立った。
「私はマカ=アルバーン。鎌職人で、ソウルのパートナーよ。…一応」
「一応ってなんだよ一応って!!」
「あはは、冗談だってば」
先ほどの戦いを終えてわだかまりは消えたのか、2人は喧嘩する前のように笑いあう。
「椿と言います。ブラック☆スターのパートナーで、"武器"です」
「おうよ!」
「マカちゃんと椿ちゃんね。私はナマエ。よろしく」
差し出された手を椿が取り、マカは「手がこんなんだから」と笑顔だけでそれに応える。
それから家があるデス・シティーまで、5人仲良く帰宅していった。
×
「確信したわ……"黒血"の研究を進めれば、鬼神を進化させられる!」
暗闇の中、1人の女が気味の悪い笑みを浮かべる。
「ただ、あの"ナマエ"って小娘―――…」
何かを考えるように、女は眉間に皺を寄せる。
見つめる光の中には、マカ達と笑いあうナマエの姿。
女は無表情のまま、ただ黙ってその光景を見つめていた。