一瞬の静寂。
聞きなれない言葉に、3人とも処理が遅れたのだろう。
遅れて、ソウルが口を開いた。

「!!不死の一族!?」

「本で読んだことがある…どうりで魂がごちゃまぜなはずだ!」

ソウルに続いて、マカが過去の記憶と目の前の男の魂を比較する。
男は笑みを浮かべたまま、3人を品定めするように口を開いた。

「…俺の本当の姿を見せてやる」

言い終わるや否や、男は上を向き、空へと吼える。
みるみるうちに魂の形状も禍々しい物へと変わっていくが、変わったのは魂だけではない。
魂感知のできないソウルや椿にもわかるくらい、男の肉体までもが変貌する。
いうなれば―――狼男。

「ソウル!鎌に変身して!」

「オウ!」

ブラック☆スターが戦闘できない今、自分たちがやるしかないとマカがソウルへ叫んだ。
ソウルもそのつもりだったようで、待ってましたとばかりに鎌へ姿を変える。
先ほどまで喧嘩していたことなど、命の前では関係がない。
―――そうは言うが。

「熱っ!!」

「え………?」

カラン、と地面が鳴った。
椿はその光景に、小さく驚きの声を零す。
マカが、パートナーであるソウルを――地面に落としてしまったのだ。
椿もソウルも、当の本人であるマカも、何が起きたのかが理解出来ずに固まってしまう。

「ソウルが熱くて持てない…?」

数秒遅れて、ようやくマカが状況を口にした。
頭で理解しているというよりは、今起きた出来事を言葉にしているだけ。
しかし、これは命のやり取りだ。
命の前で―――敵は待ってなどくれないのである。
足の先の神経を尖らせ、目標へと攻撃をくらわせるために、狼男は地面を蹴った。

「闘狼拳!!」

男の声に、3人がハっとなりそちらを向く。
しかし、気付いたところでもう遅い。
男の拳は、既にマカの目の前へと迫っていた。

「……………………」

破壊音が。悲鳴が。聞きたくもない音が、辺りに響くものだと思っていた。
しかし―――違う。
マカと男の拳の間に、鋭い刃が滑り込んでいた。

「え…?」

「何…!?」

それは、ソウルの刃であった。
しかし、あの男のスピードだ。動揺していたのもあり、ソウルは反応出来なかった。
だが、自分の刃は確かに男の拳を受け止めている、と、その感触に言葉もない。
最初に状況を理解したのは、皮肉にも狼男のほうだった。
彼は一瞬で後ろへ飛び、マカから距離を取る。
そこで初めて、ソウルは自分が"握られている"ことに気付く。
誰かが――鎌である自分を使役しているのだ。
マカではない。それは、先ほどの状況で理解している。
ソウルは、ゆっくりと自身を使う"職人"のほうへ視線を向けた。

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