魔女牢獄から囚人1名の脱獄を確認。
魔女の女王の眼を奪った魔眼の男であり不死の一族である狼男が何者かの手引きによって脱獄。
更に、脱獄を阻止しようとした警備の者は全員殺害された。
そんな"大事件"が起きているとも知らず、生徒達は今日も課外授業へ自信満々に乗り込んでいた。

「俺様の足引っ張んじゃねえぞ!」

生徒が課外授業にて魔剣に襲われてから、そういった授業は必ず生徒2組で行動することになっていた。
先ほどの大声は、そんな体制になった授業への不満であり、言われたもう1組は顔を見合わせたものの、何故か互いに顔を思いっきり逸らしてしまう。
どうやら先導する1組の足を引っ張るどころか、互いの足を引っ張っているらしい。
気まずい空気を感じ取った先導する1組のうちのもう1人が、「ロンドンの夜景綺麗ですよ」と気を回すが、案の定、3人とも聞く耳を持たなかった。
――――そう。
今、彼ら4人がいる場所はロンドンの橋の上。
真夜中ということもあってか、辺りは人が1人もいなかった。
あるいは―――既に、"人払い"が済んでいるか。

「なぁマカー…、俺『魂反応』を感知できねェから頼んだぞ」

「うん、まかせて」

先ほどまで騒いでいた少年が、もう1組の少女――マカへ声をかける。
頼まれたマカはというと、嫌がる素振りも見せず首を縦に振った。
マカはその場で立ち止まり、ゆっくりと目を閉じると胸の前で手を組む。

「エ〜と…この辺に『死神様リスト』にのってる悪人はー…」

「…………………」

そんな4人を、じっと見つめる1人の男。
マカが驚き、弾かれたように目を見開く。

「!!すぐそばにいる!?」

マカが向いた方向を、ほぼ同時に他の3人が見つめた。
そこには、黒と白のボーダー―――まるで囚人服のような―――の服を着た男は、無表情で4人を見つめていた。
左目の上にアルファベットでNOFUTUREと書かれているのが、より一層男の不気味さを際立てている。

「あのオッサン何やってんだ?こんな橋の上で」

「…何なのあいつの魂は・・・普通じゃない…何か色々混ざってるわ」

マカの目にうつる男の魂。
大きな男の体をすっぽりと包み込むような大きさの魂は黒く濁っていて、目の上に書かれている英語と同じ英語が刻まれている。
横には、魔法陣のようなものも描かれているのがマカには見えた。

「人間!?魔女!?他にもまだ何か感じる…」

「マカ…あいつ『死神様リスト』にのってるんだな?今回の課外授業は幸先がいいぜ」

「……気をつけて。あいつ、多分魔法を使うよ」

そう、2人が会話をし終えたときだった。
ニィ、と―――今まで無表情だった男が、不気味な笑顔を浮べたのだ。

「フン…やる気のようだな…椿!!『妖刀』モードだ!一気にかたをつけるぞ!」

マカへ魂感知を頼んだ少年が、隣を歩いていた長身の少女へと嬉しそうに叫ぶ。
対し、椿と呼ばれた少女は慌てたように口を開いた。

「エ…!でもブラック☆スター、あれはまだ使えないわ!」

「30秒ももてば十分だ!行くぞ!」

「っ、はい!」

少し躊躇った椿だが、自身のパートナーであるブラック☆スターに言われるがまま、その魂を共鳴させる。
共鳴率の安定した魂。あの自己主張の激しいブラック☆スターの魂が、パートナーである椿と完ぺきに共鳴しているのを、マカだけがその目で捉えていた。
そして、ブラック☆スターは男に向かって勢い良く走り出す。

「テメエ、なに橋のセンター陣取ってんだよ!!」

そして、男も動いた。

「ウールッフウルブスウルフウルブス」

右手の手の甲から先だけを上にあげた瞬間、突然地面から氷錐体が出現するではないか。
まるで魔法のようなそれにマカたちは驚くが、ブラック☆スターは気にせずそのままの勢いで突っ込んでいく。
このままでは、とマカが声を上げようとした瞬間、ブラック☆スターは影で氷錐体を縛り、そしてそのまま、男の懐へと潜りこんだ。

「くらえ!!俺様奥技!!影☆星」

と、ブラック☆スターを包んでいた影が消える。

「星、ぼし、ぼし、ぼ……へぼし…」

ガードの体勢をとっていた男は驚いたように地面へと倒れ込んだブラック☆スターを見下ろした。
椿が慌てて武器から人間へと戻り、「だからまだ無理だって…」とブラック☆スターを心配する。
そして、油断をしている男へ、じっとその光景を見ていた少年が切り込みにかかった。

「オッサン!油断しすぎここは戦場だぜ」

「やった!?いや!?ソウル!逃げて!!」

少年――ソウルが笑みを浮かべ、マカも喜びかけたが、その目に映る男の魂に悲鳴にも近い形でソウルの名を呼ぶ。
心臓に確実にソウルの刃が刺さっているというのに、男が笑みを浮かべていたのだ。
そして男の視線の先に、ソウルはいない。

「いかんいかん…体質柄つい油断してしまう…」

独り言だった。
こちらに突っ込んできたブラック☆スターも、自身の心臓を貫いたソウルですらも、男の思考に入れる価値がないと判断されている。
ソウルは反射的に距離を取ったが、そんな態度を取られたのを悟り、男を睨み付けた。
しかし――ソウルに付けられたはずの傷は、映像を巻き戻すかのように治っていく。
その様子を見ていたブラック☆スター以外の3人が、驚きで目を見開いた。
そんなマカたちの様子を見て、男に対し疑問を持っていることを悟ったのだろう。
ニヤリと笑みを浮かべて、男は答えを口にした。

「そりゃあふさがるさ。俺は不死の一族だからな」

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