「戸締り…はいらないし、ある程度のお金と食料とノイズももったし、うん。大丈夫」

夕方。
そろそろ陽が沈む、という時間帯に、ナマエは死武専を外から見上げた。
まだ夕食には早い時間だが、そこには全くといっていいほど人がいない。
"死神様"に言われた場所へ向かい、生徒達の課外授業をただ見守る。
それだけのことだったが、ナマエは快く引き受けたのだ。

「(生徒たちの課外授業…。前に生徒が魔剣に襲われた、と言っていたけれど…)」

遅くもなく早くもない速度で歩き出したナマエは、死神の言葉を頭の中で繰り返す。
魔剣なんてものは、そうそう世に出回るものではない。
ナマエ自身も、"そういうものがある"という話は聞いたことがあったが、実際に見たことがあるわけではなかった。

「探しましたよ」

と、声。
ナマエは踏み出そうとした足を止める。

「この距離まで来て気付かないだなんて、何か考え事でもしてたんですか?」

そうナマエに声をかけた人物は、夕焼けにその銀髪を靡かせながら、ナマエの進行方向に存在していた。

「……どうして此処に?」

「死神様に呼ばれたんですよ。その反応だと、俺のことを忘れてはいないようで安心しました」

口にくわえているタバコを右手で掴むと、口から離し白い煙を空中へ吐き出す。
男の表情は、かけている大きな眼鏡が光に反射して、伺うことが出来ない。
どうやら二人は知り合いのようだった。

「…それで?何か、」

何か言いたいことは・・・・・・・・・?ですか?それはこっちの台詞だな」

ナマエの言葉を遮り、男は口調を荒くする。
しばらく二人は対峙していたが、ナマエは男の言葉に何も返さず、再び歩き出した。
男はタバコを口に含み、その視線はナマエが先ほどまで立っていた場所に釘付けになったまま。

「……………………」

「……………………」

お互い無言のまま、ナマエはシュタインの横を通り過ぎる。
ナマエが階段を上る足音を後ろに聞きながら、シュタインもナマエとは逆方向に足を進めた。

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