その場にいる全員が、言葉を失った。
誰かが悲鳴を上げたかもしれない。
空間が、狂気と恐怖に支配される。

「シュタイン」

そう、この場で彼の名を呼ばうのは1人しかいない。
"神狩り"―――ナマエ。
シュタインは、反射的にジロリとだけ目を動かし、ナマエを見る。
その表情は冷たいもので。

「私を本気で殺しにくるんじゃなかったの?」

脅威だと認識しろと言ったのはそっちだ。
脅威だと認識したのはそっちが先だ。
なのに、行動がそれに伴わなかった。
それが原因だ。それが敗因だ。そしてそれがどうしようもなく彼の死因だ。

「私を敵だと認識したんじゃなかったの?」

あなたはいつ私の脅威になるのだと、その視線はまるでシュタインを責めているようだった。
悪いのは俺か?いいや違う。悪いのは、お前だ。

「……テスカを殺したのか?」

立って居た"右半身"が、地面に仰向けに倒れる。
血は勢い良く噴出していたが、既にその勢いは消えている。
どう見ても死んでいた。魂の欠片も反応もない。
どさり、とその場に崩れ落ちたのはマカ。
足が震えて、力が入らない。
これが"神狩り"だとでもいうのか。
こんな圧倒的で絶対的な存在は、もはや"神"そのものではないのか。

「見てわからない?」

再び、チェーンソーがけたたましい音を響かせながらその刃を回転させる。
次の標的は――――シュタインであろう。
シュタインは顔を少しだけ俯かせた。
その表情を伺うことはできない。

「魂の共鳴―――」

「全員、出来るだけ遠くへ!!」

この距離と抉られた地面では、どうやってもナマエとの間合いには間に合わない。
シドは生徒たちへ叫び、マリーを連れて距離を取る。
地面に崩れ落ちていたマカをブラック☆スターが立ち上がらせ、キッドと共に走る。

「シュタイン!!!」

「Ver.チェーンソー」

二度目の爆音。地面に倒れた"右半身"は、跡形も無く消し飛ばされた。
ただ、今回の目的は"破壊"ではなかったらしい。先ほどのような地響きはなく、空気を伝わる衝撃もない。
故に、シュタインは無傷だった。
爆風で飛んできた小石や木の枝が軽く当たったが、シュタインにとってそんなことはどうでも良い。
土煙が晴れたとき、そこにナマエの姿はなかった。


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