「なあナマエ、昔みたいにもっと話そうぜ」

「……………?」

突然対話を求めてきたテスカに、ナマエは首を傾げる。
だがそれは別にナマエを説得しようとしているわけでは無さそうだった。
シュタインは相変わらず攻撃を続け、テスカも"どれ"が本体なのかがわからない。
魂を見たところで、それが"本当の魂"なのか"鏡に映し出されたもの"なのか、よく観察したところでわからないそれを、瞬時に理解することが出来るはずもない。
だがナマエは被り物のせいでくぐもっているテスカの声を拾おうと、チェーンソーの回転を止める。

「昔は仲が良かったよな俺たち。ジャスティンがお前を追いかけて、俺がジャスティンを追いかけてた」

「…?いつの話?」

ナマエにはそんな記憶がないと、再び首を傾げる。
ジャスティンが自分に対して"ああ"なったのは自分が死神に魂を取られてからで、それまでは一言も話したことなど無かった。
テスカは―――…確かに何回か会話をしたことはあった気がするが、"仲が良かった"と言われるほどのものではない。

「でも今じゃこうして2人で戦って、ジャスティンはどっかに行っちまった。仲間にしないのはよくない」

「オレもいるんですがね」

「そうだった。すまなかったなシュタイン」

別に構いませんけどね、とシュタインは過去話に付き合うつもりはないとでも言うように言葉を吐き捨てる。
そして、テスカもそれ以上続けるつもりはないようだ。
ナマエは少し考えているような素振りを見せる。
シュタインはそんなナマエを少しだけ疑問に思ったが、次の行動に移る前に先にテスカが動く。
光の反射を利用した、複数のテスカによる同時攻撃。
チェーンソーを大きく振ればある程度は一気に消せるだろうが、本体を外したときの痛手は大きい。

「―――思い出した」

ナマエが、今自分に迫る危機も気にせず、ボソリと言葉を零す。
ナマエはなんの躊躇いもなくその細い両腕を思い切り振り上げた。勿論、その分隙も多い。
しかし―――その代償を支払ってまで得たものも、やはり大きい。
その狙いに気付いたか。それともただの勘か。

「待て、テスカ!!」

シュタインは声を荒げた。
だがもう遅かった。どうしようもなかった。気付いたところで、"彼"にそれを避ける術などなかった。

「っ!!!」

辺りに響くうるさいくらいの爆音と、踏ん張っていないと吹き飛ばされてしまいそうな勢いの爆風。
離れた場所で戦っていたソウルたちも、何事かとそちらを向いた。
ノアはその隙に一瞬で姿を消したが―――それよりも。
爆風で舞う土煙が消えた先に"何"があるのか。ソウルたちは、そこから目が離せない。

「一体何が起きた…!?」

キッドが、1歩そちらへ出る。
土煙が晴れたそこは――――悲惨な光景が広がっていた。
マカとソウルは息をのむ。
その光景を、2人は見たことがあった。
なぎ倒され、破壊された木々。ごっそりと抉られた地面。
まるで大きな爆発でもあったのかと言わんばかりのそれは、前に2人がギリコと戦ったとき、彼が繰り出した攻撃に似ている。
ただ―――規模が違った。あのときも相当な威力であったが、今回その破壊はかなりの範囲に及んでいた。

「なっ…………」

これが、共鳴の力とでもいうのか。
だとしたら、とマカは自分の考えが酷く安易なものだったことを知る。
何が"ただの武器"だ―――なにが"彼女に勝ち目は無い"だ。こんな、"こんなもの"は、自分達が相手に出来る脅威を超えている。
チェーンソーを持っているナマエは無傷。
反対に、攻撃の対象の先にいたシュタインたちは自身の身を庇っていたものの、無傷とはいかない。
シドがマリーを庇い、シュタインは自身を庇い。

「テスカ!!」

自分たちの周りの土煙が消えたことを確認し、視界が良好となったところでシュタインは彼の名を呼ぶ。
しかし――――姿はない。
否、よく目を凝らせばその姿を確認することができた。

「っ………!?!!」

右半分しか原型を留めていない、テスカ・トリポカの姿を。


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