03
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「ん?シャル、何手に持ってんだ?」

「え、あ!え!?」

「いや驚きすぎだろ……」

ふと何かを手に持って笑みを浮べていたシャルに、ノブナガが不思議そうに声をかける。
すると肩が跳ねるくらいに驚いたシャルが、両手を背中に回してノブナガへと振り返った。
そのまましばらくシャルを見つめているノブナガに気まずさを感じたのか、シャルは目を泳がせてどうしようかと考えているようである。

「えっと…ノブナガ、絶対絶対誰にも言わない?」

「あ?ああ……危ないことじゃねぇなら言わねえよ」

「ノブナガってそういうところお兄さん気質だよね」

「は?なんだそれ?」

「いや、わからないならいいけど」

先ほどまで焦っていた様子とはうって変わって、親友に秘密を打ち明ける子供のような無邪気さで笑うシャル。
ノブナガはそんなシャルを見ながら首を傾げていたが、まあいいかとシャルの手に握られている物の公開を待った。

「でもウボーとかには言わないのか?」

「ウボーはうっかり口滑らす…いや、うっかりじゃなくてわざと言い触らしそうだからダメ。フィンクスはクロロに言っちゃうだろうしマチはからかうしフェイタンは興味すらないだろ?それに、」

「いやもうわかったからいいよ」

「あ、そう?」

訊いた俺が馬鹿だった、とでも言うように次々と仲間を思い出していくシャルの言葉を遮る。

「絶対絶対、誰にも言っちゃダメだよ!特にクロロとシュニには!!」

「?なんでだよ?」

「わかった!?」

「わ、わかったからさ」

そこまで言われると興味が出てきてしまったのか、ノブナガはシャルに握っている物を早く見せるように急かした。
シャルは右手をゆっくりと前に持っていき、その手に握られた物をノブナガに見せる。

「―――――?」

嬉しそうに見せたシャルに対し、ノブナガはただ首を傾げた。
見たことの無いそれに、どう反応していいのかがわからなかったのだ。

「なんだこれ?」

「携帯だよ携帯!このオレンジのはシュニに、そんでもってこの青色のはオレが持つんだ」

「ふーん…で?それでどうなるんだ?」

「遠くにいても電話が出来るんだよ!凄いだろ!!」

「?凄いのか?それ」

「ノブナガに熱弁したオレが悪かったよ……」

軽く溜息をはいたシャルに、ノブナガは少し不機嫌になりながらもシャルの両手に握られた色違いの携帯を見る。
折り畳む事すら出来ない、長方形の薄型の機械。
その上の方には猫の耳のようなものがついていて、少し可愛らしく作られているみたいであった。
二つの違いは色だけみたいで、色が同じであったらどちらがどちらかがわからないくらいに似ている。というより同じだった。
落胆するシャルの態度にノブナガは眉間に皺を寄せ、何か言ってやろうと口を開く。

「別にずっと一緒にいるんだし、そんなのいらないだろ」

「―――!!!そ、そうだけど!こういうお揃いのってなんかいいじゃんか!!」

ノブナガの言葉に、今初めて気付いたといったようにシャルは驚きの声をあげる。
予想していなかった反応にノブナガも驚いたようであった。

「そ、そうだとしてもよ…なんでクロロに言っちゃダメなんだ?」

「だってクロロもシュニのこと狙ってるもん絶対…」

「?狙ってる……?シュニは仲間だろ?」

「ノブナガもそうだと思ってたんだけど、違うみたいだね」

「は?何だよそれ…」

「わからないならそれでいいの!とにかくこのこと誰かに言うなよ!!」

「あ、おい!」

ノブナガが止めようとするのを無視して、シャルは二台の携帯を大事そうに抱えて走り出す。
仕方ない奴だというように溜息をはいて、ノブナガもそのあとをゆっくりと歩き出した。





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