お菓子と悪戯
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(幻影旅団)



「トリックオアトリート!!」

「は?」

「だから、トリックオアトリート!」

「イタズラかお菓子?どういう意味ね」

シュニの言葉に、フィンクスとフェイタンは目を丸くする。
シュニは少しだけ首を傾げて、「あ、そうか」と何かに気付いたように頷いた。

「普段着だからダメかー、ちょっと待ってて」

そういうと、シュニは足早にその場から立ち去ってしまう。
相変わらずハテナマークを頭の上に浮べた2人はお互いに顔を見合わせて首を傾げた。

「2人とも首傾げてどうかしたの?」

そんな2人のまわりにゾロゾロと、他の旅団メンバーが集まってくる。
どうやら各々の仕事を終えたらしい。
仕事を終えて暇になったところで、2人が首を傾げているのだから何か暇つぶしになるだろうと考えたのだろう。

「シュニがよ、何かおかしなこと言い出すんだ」

「『トリックオアトリート』って言われたね。でもって普段着がどうのこうの言ってどっか行ったね」

簡単に説明する2人に、他のメンバーも2人同様首を傾げる。
勿論これは比喩であるが、誰もその意味はわからないようだった。

「イタズラかお菓子ってことだろ?」

「でもそれが何かわからないわね」

「あー腹減った」

「シュニは何処行ったんだ?」

「普段着がどうのこうの言ってどっか行ったね」

「つーかなんでこうも全員集合すんだよ」

「ふむ……『トリックオアトリート』か…面白い」

各々で好きなように喋っているが、全員が知ったような口ぶりのクロロの言葉に口を止めた。
皆が視線を向けたクロロの口元には笑みが浮かんでいる。

「団長、知ってるのかい?」

「ああ…といっても、何かの本で読んだだけだけどな」

マチの質問に、その笑みを絶やすことなくクロロは言う。

「ある国では『ハロウィン』というものがあってだな…」

そこからのクロロの簡単なハロウィンの説明ですらウボォーは少し理解しきれていない様子。
それでも、クロロの知的な説明のおかげで『トリックオアトリート』の意味くらいは理解したようだった。

「つまり、お菓子をあげないとオレ達はイタズラされちゃうってこと?」

「そういうことだ」

「誰かお菓子持ってる?」

「おいおい、仮にも幻影旅団だぜ?持ってるわけねぇだろ」

シャルの質問に、ノブナガが呆れたように笑って返す。
その言葉に他の全員も一応ポケットなどを漁るもののある空気ではなかった。
―――しかし。

「あ?オレ持ってるぜ」

「えぇっ!?」

「なんで持ってんの!?」

「誘拐犯かよ……」

「おい最後言った奴ふざけんな」

フィンクスがポケットから取り出したのは、大量の飴玉。
それにシャルナーク、パクノダ、ノブナガの順で驚きの声を出す。

「んだよ。甘いもの食べたくなるときってあるだろ?そん時ようだよ。一応テメーらの数あっから安心しろ」

「「(似合わねー……)」」

全員の心が一致した。
と、そのときカツ、カツ、というヒールのようなものの音が響き、全員がそちらを向く。

「これぞハロウィンの正装って感じかな?」

そこにいたのは、いつもの服装と違ってフリルのついたしかも露出の高い服を着て、魔女のような大きな帽子をかぶったシュニだった。
全員が全員、そんなシュニから目を逸らせない。

「ってあれ、人数増えてるし。…まーいっか!」

カツ、カツ、と慣れないヒールで歩きながらクロロ達へと近付くシュニ。
そして満面の笑みで、彼らへ両手を差し出した。

「トリックオアトリート!!」

「えっ……とー」

クロロ、シャル、ノブナガ、フェイタン、フィンクスは瞬時に視線をあわせると、フィンクスは4個の飴玉をシュニの手の平へとおいた。

「それはマチとパクノダとフランクリンとウボォーの分だ」

フィンクスがそう笑顔でいうと、シュニは一瞬嬉しそうに顔を輝かせたあと、すぐに不満そうな表情を浮かべる。

「フィンクス達の分は?」

イタズラするよ?、とシュニが飴玉をポケットに仕舞いこんだ瞬間だった。

「へっ?」

シュニの身体がふわりと浮き、瞬間、先ほどフィンクスが言った人物以外の5人の姿が消えた。
マチが横を向くと、いつの間にか5人は窓から外へと逃亡していたらしい。
あいつらっ、と呟き、無駄だとわかっていても他の4人は慌てて外へ向かう。
一方、クロロ達はというと。

「フフ、『ハロウィン』ね。悪くないかな」

「?どういうこと?これからお菓子くれるの?」

「いいや」

5人はニヤリと笑い、シュニはクロロの腕の中でクロロの笑みを見て、冷や汗をかいた。
そして5人は、同時に口を開く。

「イタズラでお願いします」


(ひいいい!誰か助けてええええ!)
(お菓子あげないんだから、イタズラしてよ)
(イタズラするの間違いじゃなくて!?)
(そうか、仮装すればオレ達もイタズラ出来るのか)
(じゃー何に仮装するか決めないとな)
(お、お菓子あげるから!)
(お菓子も貰ってイタズラもすればいいね)
(だってオレ達、盗賊だしね)





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