08
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シャルの声に、おれを攻撃しようとしていたノブナガとウボォー(というかウボォーにいたってはもう既におれの首を絞めにかかっていたが)も力を抜いてそちらを見る。
おれを睨んでいたパクノダも、どうしたのかと困惑の表情を浮べていた。
一番その表情を浮べたいのは、このおれだというのに。
「シュニ!」
シャルは急いでシュニと呼ばれた少女の上にかぶさっている瓦礫をどける。
先ほどの衝撃で、積み重なっていた瓦礫が少女の上に落ちてきたらしい。
……流石に、やらかしてしまっただろうか。
「お、おい…」
足早に少女へと駆け寄るパクノダに、ノブナガとウボォーが続く。
マチとクロロは少女を気にしているものの、その場から動こうとはしない。
おれも3人に続くべきだろうか、と悩んで。
「うう………」
微かなうめき声を、その場にいた全員が聞きとった。
「いったー……」
鈴のような声とともに、少女の上に乗っていた少しだけの瓦礫がカラカラ、と軽い音を出して地面へ落ちる。
パクノダ達は驚いたような表情を浮かべていた(シャルにいたってはちゃっかり手まで繋いでやがる)。
「な………………」
少女が起き上がったので、角度的にも、おれの場所から少女の様子が見える。
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怪我1つなかった。
おれに殴られたうえに、瓦礫へと思いっきり突っ込んでいたのにも関わらず―――ぶつけた跡も、かすり傷1つ無い。
かといっておれのパンチの威力が弱いというわけではない。
先ほどのように勢いをつけて殴れば、大人一人を気絶させることくらいなら出来る。
だからこそ。
おそらくパクノダたちも、そのことに驚いているのだろう。
「……いくらフィンクスとはいえ、ちゃんと手加減はしたみたいね」
「なっ…ったりめぇだろ!!」
―――いや。
手加減など、した覚えは無かった。
おれはそこまで器用ではない…つまり、大人一人気絶させるレベルのおれのパンチをくらって、コイツは平然と起き上がったのだ。
「………………」
ならばどうして。
「シュニ、大丈夫?」
「え?うん、大丈夫だよ」
どうして避けれなかったんだ。
……いや、避けなかったのか?
そうだとしても、なんのために。