05
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崩れかけた建物に案内されたシュニは、立ち止まって中にいた人物を見る。
各々で何かをしていた彼らは、建物内へと入ってきたシュニを興味深そうに見つめていた。
その視線に少し居心地悪く思うものの、奥にあるソファへと腰掛けて本を読んでいる人物を見て、シュニは表情に出さない程度に驚いた。

「(ああ…………もしかして、これは)」

シュニの判断力と適応力は、思考の混乱を遮断した。
そして理解した。
信じられない事象だとしても、それを真正面から否定することはしない。
裏世界では、そんな信じられない出来事は日常茶飯事だったからだ。
いちいち頭で否定していたら、命などとうに失ってしまっている。

「シャル、ウヴォー、ノブナガ。お帰り。………何かあったみたいね」

こちらへと歩み寄ってきたのは、子供ながらに大人びた印象をあたえる女の子であった。
パクノダ、とシャルが呟いたのをきいて、この子がパクノダという人物なのだとシュニは横目でパクノダを見る。
パクノダはまず3人に付着した血液を見、そしてこちらを見ているシュニを見た。
視線があう前に目をそらしたシュニはパクノダがどんな表情でシュニを見ていたかはわからないが、パクノダは相変わらず無表情のままだった。

「みんなに順をおって説明するよ」

「ええ。お願いね」

シュニは無言のウヴォーを見て、次いでノブナガを見た。
小さくなる前、薄れゆく意識と視界の中でぼんやりと見えた影とノブナガを重ねる。

「(ここはまだ、あのときの世界……)」

そしてきっと、今はあのときよりも昔。
ここで彼らと出会ったからこそ、彼らは自分のことを知っていたのだろう。
あのときの反応が、よくわかった気がした。
だけどその理由は、シュニにはまだわからなかった。
彼らの仲間になったからなのか―――それとも人類最悪のように、殺しにきたのか。
どちらにせよ、今の彼らに訊いたところでわかるはずもない。
シュニはどうすればいいのだろう、と建物の中を見渡した。

「……………………」

シャル達に教えてもらった人数よりも少ない。
どうやら、全員揃っているというわけではないようだ。

「おいクロロ、ちょっといいか?」

「ん……?ああ、ごめんごめん。本に集中していたよ」

ノブナガに話しかけられたクロロは慣れた動作で本に栞を挟むと、静かに本を閉じてソファの上におく。
その子供らしい笑みに対して、ノブナガは無表情のままシュニの隣へと戻ってきた。
どうやら本に集中して周りが見えていない状況はいつものことらしく、誰も何も言わない。

「クロロ、こいつを俺達の仲間にしたいんだ」

「え?」

ウヴォーの言葉に疑問の声を出したのはシュニだった。
先ほどまで師匠といっていたのに、突然仲間だといいだしたことに理解が及ばなかったのだろう。
そういうことに関しては、頭の回転は良いほうではないらしい。

「仲間に?どういうことだ」

「そのまんまの意味だろうがよ、フィンクス」

「ウヴォー、ちゃんと順をおって説明しないと」

異論があるといった様子で口をはさんできたフィンクスにウヴォーがつっかかるが、シャルが冷静にそれをなだめる。
このまま流れに身を任せておけばいいか、とシュニはこちらへそそがれるクロロの視線を避けるように視線を泳がせた。




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