02
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「どうかした?」
いきなり沈黙した3人に、シュニは不思議そうに首を傾げる。
そんなシュニから視線をそらし、ノブナガは困惑した表情でシャルへと向いた。
「こいつを師匠にするのは、間違いなんじゃないのか?」
だがそんなノブナガに対して、ウヴォーは嬉しそうな笑みを浮べている。
「オレはわかりやすくていいな」
「うーん……」
シャルは2人の反応に困惑し、少し考えるようにシュニを見た。
「でも、クロロは師匠が必要だって……」
「なにも俺らと同い年くらいの子供じゃなくてもいいんじゃないのか?」
「でも、俺達が今まで会った人間でシュニより強い人間いた?」
「それは……」
ウヴォーは何故かご機嫌な表情でシュニを見るだけ。
ノブナガはシャルの質問に顔を曇らせ、ゆっくりと首を横に振る。
人の意見は聞かないのか、と苦笑いを浮べていたシュニだったが、シャルの口から出てきた人物の名前を耳にして、何かを思いだすように眉間に皺を寄せた。
「クロロ………?」
シュニのその反応に、3人ともが不思議そうな表情を浮かべる。
彼女の前で初めて口にした仲間の名前を聞いて、どうしてシュニがそんな反応をするかがわからなかったのだろう。
無理も無い。
彼らはシュニがこの流星街に"捨てられた"と思っているからだ。
だけど、それはもしかしたら正解なのかもしれないとシュニ自身は考えていた。
ここが『何を捨てても許される場所』だとしたら―――この世界に対して拒絶反応を示した自分は、この世界から捨てられたのではないか、と。
この世界で生まれても生活してもいない自分がこの世界に捨てられるというのもおかしな話だが、そうだとしてもこうなってしまった以上、シュニにとってはどうでもいいことではあった。
「シュニ、クロロを知ってるの?」
「え?あ……ううん。シャル達の知り合いなのかな、って思って」
勿論嘘ではあったが、裏世界で生き延びてきたシュニがこの程度の嘘を即座につくことは簡単だった。
そして彼らは、何の疑いもなくシュニの言葉を信じた。それは彼らが子供だからか、それともシュニを疑っていないからか。
「クロロはいわば俺達のリーダーみたいな存在だよ」
「あいつ、何でかおれ達より強いんだぜ。頭もいいし」
「確かに実力は頭1つ違うな。まあ、だからリーダーやってんだろうけど」
リーダー、とシュニはその単語を口の中で転がす。
小さくなる前に出会った包帯を巻いた青年の顔を浮かべて、まさかな、と彼らに気付かれない程度にシュニは笑った。