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「さっきのどうやったの?そんな小さなナイフでどうやってあんなに大きな人間を切り刻んだの?なんで君は返り血を浴びてないの?ねぇってば!」
「……ここは汚いところだね」
「あ?あぁ…。ここは無法地帯だからな」
「むほうちたい?」
「ゴミでも人でも法に触れるものでも。此処は何を棄てても許される場所。通称、流星街」
「ふぅん」
「みんなしておれのこと無視しなくてもいいだろ!?」
シャルが背後で叫ぶ中、シュニは辺りの観察を続け、ノブナガはシュニの疑問にわかることだけ答える。
ウヴォーはシャルの隣でシャルの反応に笑っていた。
「ここら辺なら大丈夫かな」
シュニが立ち止まると、横を歩いていたノブナガと後ろの2人も進める足を止める。
「3人とも、怪我とかあったりする?」
シュニは振り返り、先程の男達の血がついている3人へと問う。
シャルは即座に「無いよ」と首を横に振り、他の2人はシャルに続いて「おれも」とだけ答えた。
「そっか」
それだけ言うと、シュニは黙ってしまう。
3人は顔を見合わせて、ふわぁ、と小さく欠伸をしたシュニを同時に見た。
「お前、最近流星街に来たのか?」
先ほどシュニの質問に答えていたノブナガがたずねる。
シャルの質問を流していたシュニであったが、特に流す意味もないのでゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。
「うん、多分」
「多分?」
「さっき目がさめたら、ここにいた」
「じゃあ此処に来る前は?何してたのか覚えてるか?」
「いや…よく覚えてない」
ウヴォーの質問に対してだけ、シュニは嘘をついた。
だけど話せば長くなるし、話したとしても信じられる話では無いだろうからシュニの判断は正しかったといえる。
せっかく手に入れたこの世界の情報を知っている彼らに引かれたり逃げられたりでもしたら、また小さくなる前のような行動をするしかないからだ。
「さっきのは?どうやったの?」
「さっきの?」
自分の質問を流されて不満なのか、少し怒ったようにそう質問するシャル。
「どうやって、あんな大きな男の人をバラバラにしたの?」
「どうやって、って……」
シュニはくるくるといつの間にか手にしていたナイフを右手でかろやかに回し、それから手馴れた手付きでナイフを握った。
「これで、ズバッ!ザザッ!シュバーッ!!――って」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
見事に3人の沈黙が重なった。