09
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タイムアップ、という大きな音での放送と共に第3次試験が終了する。
シュニは第3次試験で通過した25名(内1名死亡)の中でもこの試験を通過したのが早かった方だが、最後に通過した彼らよりもシュニは心底ぐったりしていた。
それはあのハンゾーとかいう294番の話が長すぎたからだったが、これも試験の一部だと考えればいい、と頭を振る。

「(次の試験で落ちればいいのに)」

そんなことを一瞬思ったりもしたが、そういえばまだ試験が残っているんだったと他の受験者の後に続いて外へ出た。

「諸君、タワー脱出おめでとう。残る試験は4次試験と最終試験のみ。4次試験はゼビル島にて行なわれる」

「(試験はあと2つ………)」

「では早速だが、これからクジを引いてもらう」

試験官が指し示した島を遠くに見ていると、ガラガラと二人目の試験官が小さな箱を運んでくる。
島を見ていた受験生達の視線はその小さな箱へいき、試験官からの説明を待った。

「クジ…?」

「これで一体、何を決めるんだ?」

受験生の疑問に、試験官が静かに微笑む。

「―――狩る者と狩られる者」

静かに聞いていた受験生達の間に、驚きと微かな動揺が走った。
しかし、流石ここまで残った者達というべきか、すぐにそんな戸惑いは消す。
そんな受験生の反応が面白いのか、試験官の笑みは耐えない。

「この中には、24枚のナンバーカード。すなわち今残っている諸君らの受験番号が入っている。今から1枚ずつ引いてもらう」

シュニは受験生達の一番後ろで一人一人、彼らに気付かれない程度に観察していたが、やはりどこにも自分をこの試験に参加させた人物は見当たらなかった。
どこかで見落としただけかと思っていたが、やはり参加をしていないらしい。
二次試験では『落ちたとか』なんてことは言ってはいたが彼に限ってそんなはずはないだろうとシュニは視線を試験官へ戻した。

「それではタワーを脱出した順にクジを引いてもらおう」

「(………あ。あの人)」

一番最初に脱出したのか、と始終トランプで暇を潰していた44番を受験生たちが見やる。
自分が引く番になるとああして注目されるのか、と会長の姿を探すシュニだったが、どうやらここにはいないらしかった。
そして24人全員がクジを引き終わったあと、ポン、とクジが入っていた箱を試験官が軽く叩く。

「今、諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかは全てのこの機械に記憶されている。したがって、もうそのカードは各自自由に処分してもらって結構。それぞれのカードに示された番号の受験生がそれぞれの獲物だ」

受験生達の、手元のカードを握る手に力が入った。

「奪うのは獲物のナンバープレート。自分の獲物となる受験生のナンバープレートは、3点。自分自身のナンバープレートも、3点。それ以外のナンバープレートは1点。最終試験に進むために必要な点数は6点。ゼビル島での滞在期間中に6点分のナンバープレートを集めること」

「………………………」

シュニは、無意識のうちにギタラクルへと視線を動かしていた。
ギタラクルはいつも通りの無表情で試験官による説明を聞いているようで、シュニの視線に気付いないのか特に気にしていないのか、手に持っているカードすら見ている様子は無い。

「!」

シュニはそんなギタラクルを見ていた自分に気付き、勢い良く目を逸らした。
ブンブンと頭を横に振り、考えないようにする。

「(301じゃない301じゃない)」

シュニは、引いたカードをまだ見ていない。
第3次試験では『共存の道』と来て、あれと戦うことはなかった。
しかし今回はハンター試験という名に相応しい、"奪い""奪われ"の試験内容。
手元のカードに書かれていない数字でも1ポイントというのだから戦わない可能性はゼロではないが、ギタラクルはそんな遠回りなことはせず、確実に自分の獲物を手にかけるだろう。
シュニはギタラクルが何者なのかはわからなかったが、それくらいは予想がついた。

「…………………」

そして、ゆっくりとカードをめくる。

『御乗船の皆様、第3次試験お疲れ様でした!当船は、これより2時間ほどの予定でゼビル島へ向かいます。ここに残った24名の方々には来年の試験会場無条件招待権が与えられます。たとえ、今年受からなくても気を落とさずに来年また挑戦して下さいねっ』

段々とゼビル島へ近付く船の上で、試験をアナウンスしている女性が受験生達へ笑顔を向ける。
しかし受験生達はそんな彼女のことは全く気にしておらず、それよりも近くにいる自分以外の受験生のことを気にかけているようだった。
――――戦いは、すでに始まっている。
受験生達は誰とはなく自分のプレートは胸からはずし、懐にしまい込んでいた。
みな、誰とも視線をあわせず、情報を遮断して。
しかし、そうしていない者もいる。

『それではこれからの2時間は自由時間になります。みなさん、船の旅をお楽しみ下さいね!』

シュニは自分のナンバープレートを外さないまま、甲板の手すり部分に寄りかかりながら島へ到着するのを待っていた。
今更ナンバープレートをしまったところで自分が一番戦いたくない301番には番号がバレているであろうし、あれ以降関わってこない44番もきっと覚えていることだろうと400と書かれているそれはそのままにしている。

「………………………」

ポケットに入れていたカードを取り出し、クルリと表にする。
その数字をきちんと記憶したことを確認し、手を離した。
カードは風に乗って海へと流れ、もうシュニの手元には戻ってこない。

「(―――――404番)」

確か金髪の少年だ、とシュニは自分の獲物を確認した。



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