(旧生徒会+α)

「あー!居た!日之影くん!」

「……ん?どうした名字。わざわざ生徒会室まで来て…」

扉をノックもせず開き、扉へ背を向けていた大男に声をかけたのは三年十三組である名字なまえであった。
日之影は自分の名を呼ぶなまえを振り返り、手に持っていた書類からなまえへと視線を向ける。

「真黒くんが変態になった!!」

「……………それはいつものことじゃ無いのか?」

「あ、そっか」

焦った表情で何を言うかと思えばそんなことか、と日之影は1人納得するなまえを苦笑いのまま見つめた。
その後なまえの納得にあはは、と笑い合う二人であったが、そんな後ろから聞き覚えのある声。

「ちょっと人吉くん!君がいるにも関わらずどうして今の会話に突っ込まないんだい!?」

「……いえ。先輩達の会話は最もかなと思いまして…」

「酷いや!僕はほんのちょっとめだかちゃんの可愛らしさや愛しさを話しただけだっていうのに!」

「お兄様。なまえ先輩にそのようなことを話すのはやめて下さいとあれほど言ったはずですが…」

生徒会室で最後の仕事をしていた人吉が呆れたように言うのも聞かず、なまえの後に生徒会室へやってきた真黒は信じられないと言ったように反論を必死に訴える。
その後ろから姿を現した真黒の妹であるめだかは、半ば諦めたように頭を抱えながら真黒へ注意を促した。

「あれ?っていうかなんで日之影くんが生徒会室にいるんだい?」

「ああ。生徒会の引継ぎのことで人吉に訊かれてな。黒神めだかがいないと思ったら真黒くんのせいだったとはな…同情する」

「ありがとうございます」

「なんで!?」

日之影の全力の同情に、めだかは精一杯感謝の言葉を述べる。
そんな二人の対応に納得のいかない真黒であったが、二人はそんな真黒を流すように対応していた。

「『あのなまえちゃんが焦って駆け込んでくるなんて何が起こったのかと思ったけど、まあいつも通りのことだったわけだ』」

「球磨川くんが何してても皆驚かないもんね」

「『なんだよなまえちゃん。いつの間に喜界島さんの毒舌スキルを取得したんだい?』」

「私にそんなスキルありませんよ!?」

今まで我関せずといった風に涼しい顔でそろばんを使って計算をしていた喜界島であったが、球磨川の言葉には黙っていられなかったようである。
すぐさま立ち上がり、そのままの勢いでそろばんを投げつければ球磨川の頭に突き刺さった。
しかし球磨川が死ぬような怪我をすることは日常茶飯事なので、特に誰かが気にすることもない。

「今日も生徒会室は賑やかだね」

「そうですね」

「やっぱり日之影くんの存在感は大きいってことかな」

「……いえ。なまえ先輩のおかげというか原因というか…」

静かに書類をまとめていた阿久根の後ろにある椅子に座り、なまえは阿久根の背中に喋りかけた。
阿久根はなまえに背中を向けならばも、苦笑いで言葉を濁す。
未だに日之影たちは真黒の変態発言に付き合っており、人吉は球磨川へ暴言を吐く喜界島を止めていた。
こうなってしまえば誰もこの状況を止めることは出来ない。
阿久根は諦めたように手元の資料を棚に戻した。

「あれ。人吉くん。喜界島さんと球磨川さんは?」

「とうとう球磨川の心が折れたんで放置ですよ…疲れた……」

人吉が席に戻ってきたので、阿久根がどうしたのだろうと質問をする。
なまえも阿久根の席に座りながら疲労感を醸し出す人吉を見つめていた。
人吉の回答をきいてチラリと生徒会室の隅を見てみれば、球磨川が体育座りで滅茶苦茶落ち込んでいる。
人吉の向かい側の席では喜界島が頬を膨らませながら計算を続けており、一先ず終わったようだと未だ終わりそうに無い日之影たちを見た。

「もうすぐ新生徒会メンバーが来るってのに、まったくめだかちゃん達は…」

「仲が良さそうでいいよね」

「そもそもあなたがあの人たちと仲良しすぎるんですよ」

人吉はなまえにそんなことを言いながら盛大に溜息をつく。
阿久根はなまえを椅子から立たせることはせず、棚に寄りかかって彼らの会話が終わるのを待った。
前にもこんなことがあったときに止めようと入ったはいいが逆に巻き込まれ、収集がつかなくなってしまったのである。

「……ちょっと、扉にこれ貼ってきますね」

「ああ。生徒会に入ったばかりの彼らにこれは、負担が大きすぎるだろう」

「?何を貼るの?」

「いえ。なまえ先輩は気にせず待っていて下さい。これが俺の最初の、生徒会長としての仕事ですから」

そう言うと、人吉は立ち上がってコピー用紙と画鋲を持って生徒会室の扉から廊下へ出て行ってしまった。
なまえは閉ざされた扉を見て首を傾げる。
人吉は、コピー用紙を画鋲で扉に貼ると、「よし」と頷いて再び生徒会室へと入って行った。

『只今立入禁止区域』


(申し訳ないが今は彼らで手一杯だ)


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