(オールジョーカー)

「なまえせんぱぁい。何飲んでるんですか?」

「ん?残念だけどチョコレートじゃないよ」

「別にアタシ、甘いものじゃなくても食べるんですけどね…」

なまえが食堂で1人、手にしたジュースを飲んでいると見知った顔の少女が声をかけてきた。
不知火半袖。
1年1組で、人吉善吉の友人。普段の大食いっぷりを知っているなまえは食堂にいるというのにその手に何も持っていない不知火に首を傾げながらも質問に答えた。

「君ともあろうものがこの飲み物を知らないだなんてね。大食いキャラは飾りかよ」

「あ、安心院さんまで飲んでるんですか…?」

「勿論ボクだけじゃない」

「半纏まで……!!?」

気配も悟らせず現れた安心院に驚くことなく、なまえはストローから口を離さない。
不知火は安心院の登場というよりも安心院もなまえと同じ飲み物を飲んでいるということに驚いているようだった。
安心院の言葉にまさかと半袖は立ち上がり、とてとてとその小さな身体で出せる最大のスピードでただそこにいるだけの存在の前に回りこみ、その口に運ばれているジュースが入ったコップを見て戦慄する。

「それどこにあるんですか!?」

「んー?」

「いや、『んー?』じゃなくて!え!なんですかそれアタシ知らないんですけど!」

半袖の質問に答えようとするなまえだが、口の中に飲み物が入っているとジェスチャーして伝える。
しかしわからないと余計に気になる半袖は急かすようになまえの肩を掴んで揺らし、そのせいでなまえは盛大にむせて更に喋れなくなってしまった。

「『あはは。まだ君には少し早いみたいだね』」

「げ………」

「『いや、そこは嫌そうな顔じゃなくて球磨川先輩まで!って食いつくところだろ?』」

平然と歩いてきた球磨川ですら、なまえたちと同じ飲み物を手にしている。
半袖はハッとして食堂全体を見渡した。
全員が持っている飲み物が全てなまえたちが持っている飲み物に見えて、半袖は慌てたように食券が売られている場所へ駆け寄る。
しかしそこに並んでいるメニューは昨日と変わらず、半袖は慌ててなまえたちのもとへと戻ってきた。

「なまえ先輩、一口下さい」

「え?ごめん…もう飲み終わっちゃった」

「僕も」

「…………………」

「『僕は残ってるけどなまえちゃん以外の間接キスはごめんだぜ?』」

「アタシの方からお断りですよ死ね」

「『最後の一言はいらなかったんじゃないのかな…』」

球磨川は落ち込んだフリをしつつなまえの隣に腰掛ける。
既に飲み終わったカップは安心院のスキルかなにかでゴミ箱に捨てられたのか、なまえたちの手元には残っていなかった。

「『ってことでなまえちゃん。はいどうぞ』」

「いやもうお腹いっぱいだよ」

「球磨川くん。どんなスキルで死にたいのかな?」

「それかアタシが喰い改めてやりましょうか」

「…………………」

球磨川がストローをつかんでなまえへ差し出すが、なまえは平然とそれを断る。
しかしそれを聞き入れることなく球磨川はじっとなまえへストローを差し出し、それを見ていた安心院が笑顔で質問をした。
それ以上に、得体の知れない飲み物がわからずイライラしていた半袖の方が殺気が強いように思えたが、なまえは突然の浮遊感に驚いたように目を見開く。

「…………………」

「『……おいおい。安心院さん。彼はただそこにいるだけじゃなかったの?』」

「……いやあ、そのはずなんだけどね…」

「やっぱり皆、球磨川先輩のこと嫌いなんじゃないんですか?アヒャヒャ☆」

「え、えーっと……」

チラリと上へ視線を動かせば、なまえは始めて半纏の素顔を見た。
その表情は何も思っていないような無表情であったが、その腕はしっかりとなまえの腹部を支え、そのままなまえを球磨川から引き離す。
宙へ浮く足をじたばたすることもなく、足を下ろされたなまえは唖然と定位置に戻る反転を見つめていた。

「さて、球磨川くん。嫉妬の力は恐ろしいということを教えてあげようか」

「それと食べ物の恨みは大きいですよ。まあ。球磨川先輩なら死なないですから大丈夫ですよね?」

「『何言ってるんだよ。僕は悪くない』」

志望して死亡


(ん?バーミー。そんなところで隠れて何してんだ?)
(いやぁ、ヒートー。オールジョーカーの大人気なさを再認識していたところだよ)


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