目には凄い力が宿っていると私は思うんだ。ほら、諺にも“目は口ほどに物を言う”ってあるじゃんか。本当にそのままだと思う。
現にさ、目の前の彼が言いたい事も私からすりゃお見通しな訳で。
「嫌だよ。絶対に嫌。」
「『やだなぁなまえちゃんったら。』『また読心術使っただろ!』」
「だから読心術じゃないって何回言ったら球磨川は理解するんだ。目を見たらアンタの言いたいことぐらい想像つく。」
「『えー!!』『なんなら、今僕が考えてること言って見てよ!』『ほら、さぁ!はやく!』」
「『やっぱり手ブラジーンズより裸Yシャツのがいいかも』だろ。」
「『や、』『やだなぁなまえちゃんってば!』『正解!』」
「安心院さんに一回と言わず一万回ぐらい殺されて来たら?」
球磨川禊。箱庭学園3年13組。箱庭学園第99代生徒会執行部副会長を勤めている。
そんな奴とはなんの接点もない私が何故球磨川と会話をしているのかと言えば。ただ単に私が安心院さんの親友もどきだから。
こいつは毎日のように親友もどきの私に安心院さんの倒し方や嫌いな物などを聞いてくる。その度に私はスルーしているのだけれども。
「…いい加減うざいんだってば。」
「『ん?』『何が?』」
「アンタの存在が。」
「『わぁ、』『ストレートに言うな。』『流石なまえちゃん!』『そんな君は大好きだぜ。』」
「有難迷惑だっつーの。」
汗をかいたグラスに入っている氷とオレンジジュースをストローでクルクルかき回す。分離したジュースは透明の液体と混じり合い淡いオレンジ色に姿を変えた。
「『ねぇ、なまえちゃん。』」
向かい側に座っている球磨川は目を細め、ニヤリと口に弧を描いた。まるで、私の心情を見通しているような、そんな目。だからこいつは嫌いなんだ。
「『いい加減素直になれよ。』」
「アンタにだけは言われたくないな。括弧(格好)付けずに言ってみろよ。アンタの本心を。」
「『じゃあ言わせて貰うけど、』…何で君は僕の目を見ないのかな?あぁ、目、と言うより本心(め)か。もしかして、僕の本心を見たくないとか?」
「「僕はなまえちゃんを愛している。この世界の誰よりも。」なんて、クソだっせー台詞良く思い付くよな、アンタも。」
「あれれ、見てたんだ。いや、“ようやく見れた”って風だね。」
「残念ながら、アンタと出会った時からアンタの本心は私に筒抜けだ。」
初めて球磨川と会った、あの日。口では安心院さんの事を聞いて来たのに目では私の事を知りたいとばかりにギラギラと輝いていた。
会うたびにその欲望は大きくなっていて、私はそれを見なかった事にしていたのだが…ついに我慢できないってか、この変態野郎は。
「ふぅん、へぇ、そうなんだ。」
「だからもう二度と私の前には現れるな。」
遠回しに、フったつもりだった。
「あれ?おかしいな。」
「何がだ。」
「だってなまえちゃん、僕の事好きだろ?」
カラン、と氷が音をたてた。目をやった球磨川はニコニコ胡散らしい笑顔を振りまいていて、その瞳に映る私は嘘だと思うくらい真っ赤な顔をしていた。
「なまえちゃんの場合はあれだね。“顔は目ほどに物を言う”だね。」
「残念ながら、そんな諺はないがな。」
目には凄い力が宿っていると私は思うんだ。ほら、諺にも“目は口ほどに物を言う”ってあるじゃん。でもさ、現実的に考えれば口よりも目よりも相手の考えが分かるのって“顔”だよな。
ほら、みてみなよ。目の前にいる彼だって、私をみてこんな嬉しそうに笑ってる。あーあー、気持ち悪い。
ー 顔は目ほどに物を言う ー
真っ赤な顔と
嬉しそうに笑った顔
繋がれた手は
夕陽に溶け込み消えた
絡繰人形のあるまみん。さまから相互記念として頂きました!
勝ち誇ったような球磨川先輩と照れて真っ赤になってるヒロインが可愛すぎです…!
ありがとうございます!大切にさせて頂きます。