(十三組+α)



それは、十三組でなまえがお昼ご飯を食べていたときに起こった。

「なまえ先輩」

そう、静かに名前を呼ばれたなまえは振り返る。
その場にいた宗像や日之影も、驚いたようにそちらを見た。
誰も、彼の登場に気付かなかったのだ。

「悪いんですが私を見ないでくれますか。私は人と目が合うとキョドってうまく喋れなくなるんですよね」

しかし誰も彼から目を離さない。

「別に私はお昼ご飯を一緒に食べなくても全然平気ですけどね、なまえ先輩が私と一緒にご飯を食べれなくて寂しくしてるんじゃないかと迎えに来ましたよ」

「おいなまえなんだコイツ」

「え?鶴喰くんだよ、一年生の」

「いやそうじゃなくて…」

高千穂が鶴喰の存在にドン引きしたようになまえへ訊く。
しかし宗像は、高千穂とは違う箇所で眉間に皺を寄せた。

「……なまえが君と一緒にご飯を食べれないから寂しい?そんなわけない。僕がいる」

「先輩って殺人鬼なうえに自意識過剰なんですね」

「えーっと、鶴喰とか言ったか?一緒に飯食うか?」

「いや別に私はあなた達と違って1人でご飯食べても平気ですけどね。なまえ先輩が私がいないと寂しいだろうから」

「『嘘はよくないな』」

その声に、宗像や高千穂が不機嫌そうな顔になる(日之影は呆れたような諦めたような表情でため息をついている)。

「そうやって私が言うことをなんでもかんでも嘘にするとかあなた友達いないでしょう?」

「『少なくともジャンプを否定してSQを勧めてくる奴なんかとは友達にはなりたくないけどね』」

「高校生にもなってまだジャンプ読んでるとかありえませんね。だってあの雑誌子供向けですし。そうですね昔幼稚園のとき弟に借りて読んでましたよ」

「『まぁ別にSQを否定するつもりはないけど正直僕が園児のときにあったとしても読む気にはならなかっただろうね、SQってさ。まぁ別に否定するつもりはないんだけどね』」

「"ジャンプよりもSQのほうが百倍面白いです"とか後で言ってもあなたとは友達になれそうにありませんね」

「『安心してよ。一生言う日なんて来ないからさ』」

十三組の教室で十三組ですらない2人が言い争う光景に、面倒なことになったな、となまえ以外の全員が眉間に皺を寄せて、すぐさま動ける体制に入る。
普段の彼らならこんな面倒なことに巻き込まれるのは迷惑なのでいつの間にかいなくなっているのだが、なまえがいる。
しかも彼ら2人がなまえを狙っているとなると、そうはいかなかったのだ。

「悪いが喧嘩なら他でやってきてくれないか」

「『喧嘩なんかしてないよ。宗像くんの目はどうにかなってるのかな』」

「………殺す」

「おい宗像、面倒を増やすなよ」

高千穂が呆れたように呟くが、宗像はゆっくりと立ち上がる。
球磨川も鶴喰もいつの間にか手にネジとコマを手にしていて、どうしたものかと高千穂と日之影は目を合わせた。

「鶴喰くん、人吉くんとは一緒にご飯食べないの?」

「彼は私と友達だというのに食堂で小さな女の子と一緒に食べていたので放置してきました。別に私は女の子と一緒にご飯が食べたいとか思ったことありませんし、あ、でもなまえ先輩は別ですよむしろなまえ先輩を食」

「刺殺」

「『宗像くん僕にも刺さってる刺さってる』」

宗像はその場から動いていないが、鶴喰の背後の壁と球磨川の頭にナイフが突き刺さっていた。
鶴喰は頭をずらしてナイフを避けたのだが、球磨川はどうやらそれをしなかったらしい。
しかし避けても避けなくても、球磨川にとってどうでも良かった。
球磨川は何事も無かったかのようにナイフを抜き、その場に捨てる。

「球磨川くんは?飛沫ちゃんとか蛾々丸くんとか…人吉さんとか」

「『飛沫ちゃんの攻撃を全部僕に押し付けてくるからご飯がなかなか食べれないし先生は僕が見てる本の人に似てるからなんかなあ…食欲と性欲は別なんだよね。まぁなまえちゃんは』」

「銃殺」

「殺人鬼先輩、私にも当たってます当たってます」

球磨川の身体と鶴喰のコマに、銃による穴が開く。

「喧嘩をしているのかコントをしているのかわからないな…」

「コントで人が死んでたまるか」

日之影が最後のパンを口に運びながらこぼした言葉に、高千穂が呆れたように突っ込んだ。

「2人とも一緒に食べる友達が用があっていないから荒れてるのかもね」

「なまえ、お前それ天然超えすぎて世界遺産並だぞ」

「高千穂くん何言ってるかちょっとわからないんだけど」

「おいふざけんな」

ふと高千穂が、顔を左へずらす。
すると、今まで顔があった場所に刃物とネジが大量に飛んできた。
恐る恐る高千穂がそちらを見ると、笑う球磨川と笑わない宗像がそこに存在していた。

「『あ、そっか。反射神経あったんだっけ』」

「……………惨殺」

「怖ぇよお前ら!」

高千穂は立ち上がり、戦闘体制へと入る。
彼らが本気を出せば、自分がいつ怪我を負ったって不思議ではないのだ。

「『じゃあなまえちゃん、明日からは僕と一緒に食べようね』」

「何言ってるんですか球磨川さんみたいな嘘つきと一緒にいたらなまえ先輩に悪影響です。だから明日からは私と一緒に食べた方がいいんですよ。まぁ私は女の子と食べなくてもいいんですがなまえ先輩が寂しがりますからね」

「おいおいなまえは十三組だぜ?明日からもオレたちと一緒に飯食うんだっつーの」

「お前達に明日は来ない」

最後の宗像の言葉に、「それオレも入ってんのか!?」と高千穂が驚く。

「なまえ、どうにかしてくれこの状況」

「えっと……、こういうときこそ元生徒会長の出番じゃないの?」

「…………………」

なまえから、喧嘩をする4人へと日之影は視線を移す。
それから、呆れたようなため息と共に呟いた。

「無理を言うな。おれはただの十三組だぞ」

難儀難解な難題


(おい不知火、なんか十三組の教室騒がしくないか…?)
(人吉の友達のあの暗い奴が暴れてんじゃないの?)
(いやだから友達じゃねぇってば)



イラストサイト、蒼CUBEの縁さまへ相互記念というカタチで贈らせていただきました
縁さま以外の方のお持ち帰りは許可していません


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -