プロローグ



日曜の午前中。

ふらりと一人立ち寄った本屋でいつものように、目についたファッション雑誌を手に取り、パラパラとページを捲る。


「あー。このジャケット可愛いな・・・あ。でもこっちのワンピースも可愛いかも・・・。」なんて思いながらページを流すようにみる。


一通り軽く見て、もういいかな、なんて思っていた矢先、

ページも終盤、最後の方にある恋愛のお悩み相談のコーナーにたまたま目が留まった。



そのコーナーというのは、読者の悩みに恋愛評論家と呼ばれる人がQ&A方式で答えるというもの。

なんだか興味深くて、ついつい見入ってしまう。


相談自体は、どこかで一度は見たことのあるような内容のものが大半を占めていた。


《彼氏の浮気を見破るには?》とか、《友人の彼氏を好きになってしまいました。》とか。



みんなそれぞれ、女の子はいろんな恋愛の悩みを抱えているんだな・・・と、たくさんの恋愛相談の一覧を見ながら思う。



『・・・!』


そんな数ある相談内容のうち、私にとってはものすごく関心を引く・・・天の救いかと思わせるものが一つ目につき、思わず息を呑んだ。



『恋人がドSなんですがどうしたらいいですか?』



おそらく、この記事を私に読ませる為に神様が敢えて本屋に立ち寄らせたんだと、絶対そうだ!と思わせるくらいの衝撃が私に走った。

つい雑誌を持つ手にも力が入る。



恋人が・・・ドS・・・だと!?


誰だよ、こんな質問した奴!


・・・・・もう、親友になって下さい。


そう切に願わずにはいられないくらいだ。



『大変だよね・・・あなたはきっとよく頑張ってるよ、まだ見ぬ親友さん。』と心の中で語りかけてしまうくらい、この相談者の気持ちが手に取る様に分かってしまう自分がなんだか物凄く残念に思えた。


そうなんです。

何を隠そう・・・私の恋人もドSなんです。


だからこの、まだ見ぬ親友さんの痛み(恐怖?)が痛いくらいわかってしまう。

私はこの相談の回答が気になって、先へと読み進める。




Q:恋人がドSなんですがどうしたらいいですか?

A:そうですね、何をされても笑顔で耐えなさい。


Q:え、でもいつまでも耐えられない・・・きっと限界が来ると思う。限界がきたら?
『(そうだ、そうだ!その通り!)』

A:彼に、優しさが欲しいなあと呟いてみなさい。


Q:・・・彼に意見なんてしたら・・・かえって悪化したら?
『(分かるよ、分かるっ!あなたの気持ち!意見なんて恐ろしくて出来ないんだってば!)』

A:あなたも、たまにはやり返してみなさい。


Q:そんなこと!後で、きっと何倍にも・・・返り討ちにあったら?
『(無理!無理!この回答者、頭オカシイんじゃないの!?やり返すなんて死ぬ覚悟が必要だっつの!)』

A:では、嫌いになるよと泣いてみなさい。


Q:・・・それでもダメなら?
『(ドSにそんな小細工通用しないよ!・・・もう死んで来いと言ってるようなもんじゃないか!)』


A:あきらめてドMの道に目覚めなさい。
『(・・・・・。)』



内容はここで終わっていた。

それにしても、最後の回答は究極だな、おい。


でも、世の中には私と同じようにドSの恋人に悩んでいる同志がいると思うと、なんだか勇気と元気が湧いてきた。

もしかしたら、私にも何か打開策が見つかるかもしれない・・・。

そう思うと胸の中に小さな火が灯ったような気がした。


『よしっ!』と自分に気合いをいれて、手に持っていた雑誌を元の雑誌棚に戻し、帰宅しようと出口の方へ向かって歩く。



・・・。


・・・・・。



『・・・やっぱ、あの雑誌買っておこう。』


2・3歩歩いたところで思い返し、もう一度あの雑誌を手に取ってレジへと向かった。





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