計算男子



俺ってさ。


几帳面?

悪いように言うと、計算高い?



なんて言うかさ。


あ。ホラ。

よく、小学校の先生とか言うじゃん?

「計画的に行動しましょうね」って。


それそれ。



まさにその典型だと思うんだよね。


他人に乱されるのとかもあんまり好きじゃないし。


あー。逆に人を乱すのは嫌いじゃないんだけどね。



だから。

要するに、今この現状も俺の計算通りって事。



家族が留守なのも。

部活が午前で終わりなのも。

愛しい彼女と午後からデートなのも。

2時間前、偶然を装って2人でレンタル屋に行ったのも。


ぜーんぶ俺のシナリオ通り。



『神くん。何する?今日。』

「んー。静は何したい?」


『うーん。暑いしなぁ・・・どっか涼めるとこ行こ?』

「・・・じゃさ・・俺んち来ない?DVDでも観ようよ。」



『・・・え?良いの?』

彼女の表情がパッと明るくなる。



「うん。近くにレンタルする所もあるし、行こ。」


そう言って彼女の手を取って歩き出す。



ハイ。

計画通り。



インドア派の彼女がこう言うのは予想済み。

少しの時間も無駄には出来ない。


足早にレンタル屋へ向かう。



『神くん。どういうのが好きなの?』

「恋愛モノ以外なら。」



彼女が恋愛モノが好きなのを知ってるからこそ、敢えてそう言う。


まぁ。正直。

人の恋愛なんて興味ないけど。



『・・・うーん。』

「静、夏だし怖いの観ようか。」


『えぇ!!・・・やだよっ!!』

「俺、観たい。」

『えーッ。・・・・じゃ血が出ないやつね。』

「幽霊系なヤツ?」


『・・・・・・それなら。』



怖いヤツ1本借りて。

帰りにコンビニで2人分の飲み物と少しのお菓子を買って。

手を繋いで、自宅へ向かう。


『神くん。怖いの平気?』

「うん。多分。」



ホントは全然平気に決まってんじゃん。



『え?苦手なのに観たいとか意味分かんない。』

「ハハッ、怖いもの観たさ?」


『ふーん。アタシは得意じゃないからね。』
と口を尖らせて彼女は言った。



うんうん。

知ってますとも。


だから敢えてだっつの。


『お邪魔しまーす・・・。あれ?誰も居ないの?』

「うん。あ・・・今日は1階のリビングね。」


『・・・・画面大きいと怖さ倍増しそうだね。』


なんて彼女は暢気に言うけど、笑ってられるのは今のうちだからね。


その反面、俺の心は躍る躍る。

あぁ・・・楽しみ。

気を抜くとニヤついてしまいそう。



「じゃ・・観ますか?」

『・・・はーぃ。』


「やっぱ乗り気じゃない?」

『うーん・・・ま、大丈夫。』



・・・・1時間経過。


今、現在。

彼女はというと・・・・・あぁもうッ!!

いちいちビクついててウケる。


結局、怖いもの観たさだったのは彼女の方で。

顔を両手で覆いながら、指の隙間からチラチラと画面を観てる。


そして俺はというとやっぱり冷静で。

彼女の様子にニヤニヤしっぱなし。



『じ・じ・じ・神くんッ!!・・・ひゃっ!!怖くないの?』

「・・・・・。」


ハハッ。声、裏返ってんじゃん!!


『う・わぁぁぁ!!神くんッ、神くんッ!!!来るッ!!!来るッ!!!・・・・出たぁぁ!!!!』

「・・・・・。」


なに?

俺の袖掴んでさ。

目、ウルウルさせてさ。


・・・小動物じゃん。


可愛くないわけないじゃん!!

ま。計画通りなんだけど。



「静、コッチ来る?」


ソファに座っている俺の足と足の間をポンポンと叩くと、

彼女は急速に俺の目の前にストンと収まった。


あー。ヤバイ。


「・・・怖いの?」と彼女の耳元で囁きながら、お腹に腕を回す。

『ふふふ・・・うん。』


「・・・まだ怖い?」と彼女の首筋に顔を埋めながら尋ねる。

『神くん。くすぐったい。今、映画イイトコだからッ!!』



え?

空気読もうよ。


「俺より映画?」


そう尋ねると、


振り向いた彼女は、『もうっ!』と言って、俺の唇に軽くキスをした。

そうして直ぐに画面に目をやる。


ははっ!ウケル。


ま。いっか。

夜はこれからだしね。


とりあえずのところ、今回の【計画的行動】の成果は、


彼女の可愛い仕草と、可愛い可愛いキスでした。


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