自転車泥棒
writing by 『あなたとエクレアとミルクティー』日向愛理さん




自転車泥棒、あらわる。



「おいこらそこのキツネ」


「あ、ばれてもた」




即効、捕獲。



「なにしてんねん」

「いや、あっついやん。歩いて帰ると溶けるでほんま」


「あんな、もっかい聞くで。なにしてんねん」

「せやから静のチャリでさーと帰ろ思うてんねん」


「…淳、あんたな、あたしかて今から帰るんや!」

「ほいなら乗せたるさかい、ほれ後ろ」


「あ、すんませーん、ておかしいやろ!」

「おんなじとこ帰るんやからええやーん」


「誤解招く言い方すな。隣りってだけやんか」


幼馴染であるこの土屋淳は

こんな感じでいつもあたしのことを

「便利なお隣さん」扱いする。



「…ほんまに」

「ん、なんか言うた?」


「しゃあないけ乗ったるわ」

「アッシィーのアツシ君やで!おもろい?」


「おもんないわ、同じ関西人としてセンス疑うわ」



「このながーいーながいーくだりーざーかをー」


「全然音あってへんし、全然下ってないし」


「相変わらず静ちゃん手厳しいなぁ」

「相変わらずですんませんね」


「元気やったー?」

「ん?元気やけど?」


「ん、ならええねん」


あ、そう言われてみれば久しぶりやな

淳と会うの

(こいつ、部活忙しいからな)


「あ!家と方向逆やん!」

「アイス食べたいわー」


「明日もテストやろ!勉強せな…」

「ちょっとぐらいええやん、な?」



…そんな爽やかに笑われたらなんも言えんわ


「…アイスゆうてこれかいな」


「あれっ静パピコ好きやったやん」

「いや、好きやけど半分やん、せこい気分」


「あんな、わかってないわ静は。なんでパピコが2つにわかれてる思うてんねん」

「パピコについてそんな熱く語られましてもね」


「こやって、分けっこして仲良く食べるためやろ?ほい、静の分」

「…あ、ありがと」


な、なんやねん今日の淳。

(無駄に爽やかまき散らしとるで)


「うま」


「ほんま暑いな、淳やないけど溶けそうや」

「一緒に溶けとく?」


「…うっさいで」

「ははっ。あー、えー天気や」


「良すぎやけどな」

「雨さんよりええわ、天気で、好きな女とパピコ分けっこして気分ええわ」


「…は?!」

「え、…え!俺なんかゆうたか!?
…や、冗談やで!い、いや半分本気やけど!バファリンの半分は優しさで出来てますーなんてな!はは…」


「…」


「静。か、かえろか」

「明日もテストやしな」


ぎこちなく、自転車の後に乗る

ほんま、なにゆうてんやろこの男は…

び、びっくりするやん。


「静ちゃん」


「な、なんや」


「えーとですねー、あーっと…テスト終わったらどっか行きません?」

「…ええけど」


「まじか」


そう言いながらハンドル片手に振り返った淳の顔は

真っ赤で、でも満天笑顔で

まー、人のこと言えれんわ

あたしも多分真っ赤。



自転車泥棒
(こいつ、あたしのハートまで泥棒するつもりかいな)



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