日記





「大丈夫ですか!!?」

「この子を先にお願いします!」

『嫌!嫌だよ!!母さん!!』



ほとんどの家が火に包まれ、銃弾の音や悲鳴があたり一面に響いていた

幼い少女は助けに来た若い男に連れられ母親と離れ離れになってしまった

必死に手を伸ばすも離れる一方で

どんなに叫んでも遠のいていくばかりだった



『っ!!……夢』



思い切り飛び降りた私の体は汗でひどくぬれていた

頬に伝うのは涙で

そっと首にかかっているペンダントを握り締めた



『シャワー……』



悪夢まるごと流れてしまえばいいのに

あの日のことを夢で見るのは何度めだろうか

母を残し己だけ助かってしまった悲しさと

無力ゆえ、何もできなかった自分が今でも大嫌いだ



いつもならまだ寝ている時間であるがあんな夢を見た後に眠れるわけもなく

私は自分で営んでいる配達屋の準備に取り掛かった

それでも時間が余ったから母の部屋に行こうと思う



あれから一度も触っていない

生前のまま残してあるその部屋は少しほこり臭かった



『日記?』



机の上にぽつんと一つの本が置いてあった

本の表紙に字はなくて、何かの紋章のようなものが一つだけあった

だけどそれは母の世代とは思えないほど古く

むしろ祖母のものではないかと思った


4月3日
 桜の花も満開で、とても心地よい日
 みんなとお花見でもしようかしら
 そろそろ政府も動き出すころだし
 忙しくならないうちに遊んでおかなくちゃ


4月4日
 政府が予想以上に早く動き始めたわ
 政府に情報を持っていかれる前に何とか探し出さないと
 そしてみんなを守らないと
 この力がばれたら彼らは私たちを利用しようとするだろうから


4月5日
 まだ例の情報は何も見つからない
 今日はなぜそこまで必死に探すのか聞かれたわ
 別に宝と呼ばれるものが欲しいわけじゃない
 この力に関するヒントがそこにあると思うのよ
 この力が与えられた意味も分るはずなの


4月6日
 今日、政府に情報を売った子が出たわ
 予想通り、力を貸すよう要求が来た
 お金に目がくらんだ彼は、きっともう出会ったころのように純粋ではなくなった証拠だろう
 私は彼を消そうと思う


4月7日
 政府との全面戦争となった
 ただ一般市民は巻き込みたくないから特別な空間を作ろうと思う
 人数は圧倒的に政府が上
 力をもつものは一人、だけど彼のクローンだとかいろいろ手を打ってくるはず
 こっちは4人、でも負けたりしないわ
 私たちは大丈夫


4月8日
 今日、決戦の日
 案の定、政府はいろんな兵器を出してきたわ
 もちろん私たちにかなうわけもなくこちらの勝利だ
 彼は死に際、こう言ったわ
 「俺は再び蘇り、復習を誓おう」
 なぜか本当にそうなると思った
 そうならないように、再び力をもつ者たちが目覚めぬように
 私は毎日祈りを捧げよう



それ以降のページは切り取られ、見ることができなかった

この話は本当なのだろうか

だとしたら力とは一体どういうことなのだろうか

疑問ばかりが私を埋め尽くしていた


   



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