死神さんと、わたし。
-わたしの生まれて来た理由-
みやび
「小さい頃から、わたしは他人(ヒト)と見る世界が違っていた。あなたは、他人(ヒト)の頭の上に、二千何年何月何日何時何分何秒とか、赤く光って見えるなんて、ないでしょ?」
みやび
「わたしには、それが普通。いつもの光景。"両親"にだって、それが見えることは言わなかったわ。言えないわよ。ねぇ?」
みやび
「ちょっと、聞いてるの?」
ちあり
「聞いてる」
みやび
「そう。言っておくけど、あなたが聞いたんだからね。わたしが、自分の記憶について、どこまで覚えてるか。それを、聞かせてくれないかって。答えてあげてるんだから、ちゃんと聞きなさいよ」
ちあり
「ああ。………また、今回も間に合わなかったか…」
みやび
「は?」
ちあり
「ごめん、みやび。飛ぶよ」
みやび
「ちょ…何……きゃあっ!?」
(鉄骨が落ちてくる)
みやび
「な…あぶ、な…」
ちあり
「みやび。自分の"時間"」
みやび
「は?わたしの寿命?20歳までよ。それがどうかした?」
ちあり
「いつもは赤いのが、黒くなってはいないかい?」
みやび
「え…?わ、やば…。わたし、死ぬ?」
ちあり
「可能性はあるね。人は、本来の寿命より前に、予期し得ない事故等で死んでしまうことがある。それが近い時、寿命の色は、黒く染まる。だいたい、人は2、3回はそういう危険が迫る時がある」
みやび
「つまり、わたしの色がまた赤に戻るまで、しばらく危険は終わらないってことね」
ちあり
「そう。気を付けて。ぼくは、君の守護死神として、できる限り助けるけど」
みやび
「ありがとう。助かるわ。流石に、まだ死にたくはないもの」
ちあり
「うん」
ちあり
(ぼくもまだ、きみに死んで欲しくない)
* * * * * * * * * *
ちあり
「どう?落ち着いた?」
みやび
「まだ……全ては理解できてないけど、とりあえずは」
ちあり
「そう。焦らなくても良い。これらはどうせ"過去"に過ぎないから。ぼくたちは、"今"を生きてる」
みやび
「ええ。……ごめん、ちょっと一人にさせて」
ちあり
「うん。……おやすみ、みやび。良い夢を」
みやび
「………おやすみ」
* * * * * * * * * *
雅
「ちぃ、こっち!ここよ。私が見つけた、謎の祠!誰を祀ってるのかしら。ねぇ、奥まで見てみない?」
チアリ
「雅さま…やめましょうよ。ここはきっと、神の聖域です。何かあってからじゃ、遅いですよ…!」
雅
「大丈夫大丈夫!私、先見の巫女だもの!危険だったら、力が教えてくれるって!行きましょ!」
チアリ
「もう…何かあっても、知りませんからねー?」
* * * * * * * * * *
雅
「ちぃ!ちぃ!…嫌よ、嫌!」
チアリ
「みや、び…さ、……逃げ…」
雅
「いや、嫌ぁ!」
???
「愚かな人の子らよ…良くぞ我を目覚めさせたな…。褒美に、ほれ。呪いをくれてやろう」
チアリ
「う、あああ!?」
雅
「ちぃ!?嫌っ!やめて!」
???
「ふふふ…やはり人の子は、面白い。死の間際にあっても、心配するは愛の者、か…」
雅
「許さない…貴方を、絶対に……封印してやる…例え、この身が朽ちても…」
???
「ほう…面白い。いずれまた会おうぞ、巫女よ」
雅
「殺してやる!」
* * * * * * * * * *
雅
「ちぃ…。ごめんなさい。貴方にかけられたまじないが、私には分からない。これも、巫女としてのお務めを、毎日きちんとしてなかった、罰だよね。本当、ごめん」
雅
「でも、貴方を、絶対に助ける。例え、何年…何十年。転生を繰り返しても…」
雅
「だから、許してね。禁呪、使うこと。一人でできるか分からないけど、成功したら、また貴方に会いに行くから。生まれ変わっても、貴方を探しに行く。きっと、貴方が生まれ変わっても、分かるはずだから」
雅
「だから、ごめんね。ちぃ……好きだよ」
* * * * * * * * * *
みやび
「………ちあ、り…。あなたのまじないは、永遠に時を彷徨うことだったのね。生まれ変わることもできず、魂を浄化してもらうこともできずに…」
ちあり
「うん。ぼくはね、ずっと…ずっと、あの時のままなんだよ。雅さま」
みやび
「ごめんなさい。許して、もらえるか、分からない。あなたも、きっと生まれ変わっているのだと…」
ちあり
「だから、ずっとあのままだって。……自分は生まれ変わり、魂も浄化してもらってたけどね」
みやび
「ごめんなさい!本当に、ごめんなさい」
ちあり
「いーさ。今は、あの"邪神"を倒すことだね。あいつにかけられたこの呪いも、倒せばきっと解けるはず。……やっと、死ねるんだ」
みやび
「ねぇ、ちあり。わたし、あいつを倒したら…また、禁呪使うから。二人で、生まれ変わろう?今度は、幸せになるの。ね?」
ちあり
「考えとくよ…」
みやび
「約束よ!……それじゃ、行きましょう」
ちあり
「ああ」
* * * * * * * * * *
×××
「死ねば良いんだよ。おまえなんて」
END