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かみ合わない話し(弐)

め、目が――っ

と、某ジ○リの某キャラの様に悶えて言いたい気分になりました。心臓が口からえれって飛び出てきたらどうしよう。

近距離で目が合うなんてとんでもない。いやそれよりも思わず息すんの忘れちゃったじゃないですか。なにこの美人。

ど、どうしよう、

すごいですよね、近距離にたえうる美人様です。
うわわ、咄嗟に飛び出た言葉が私、最悪すぎてやしませんか…




「……っふは、」

「?」

「は?…げっ!」
「『はげ』とは随分な言われ様だね」
「し、失礼致しました。何かご用ですか?」

「…」

「あの?竹中さ…まですよね」




そうです。竹中半兵衛です。
どうしてこのお方に声をかけられているんでしょうか、私。

そしてベタすぎる驚きと有りがちなツッコミに心が余計に動揺してしまう。
あれ?なんだろう?疑いの眼差し?っぽいですか。

目付きが怪しかったとか?
確かに見とれてましたけど、それは美人すぎるあなたのせいじゃないですか。見とれた私は悪くない。普通の反応だから悪くない。悪くない、…たぶん。

やましいことなんか、ないですよ。見とれてただけだもん。怪しくなんかも多分ないはずだと思いたいのです。

早々に何となく逃げなければ。ん?そうそう、そうです。竹中半兵衛ってこういう声で口調なんですね。
優しい声だなぁ。一生忘れないでいよう!


うっふふ〜じゃない…
いや、よくわからないけど、なんだか、直感が…あれ?これは…

まずい!こわい!逃げたい!と私の何かが叫んでますから何とか逃げ道を確保しないと。明智さんのおかげで訓練できた何かの勘がしっかり逃げろと叫んでる!

大体ですよ、竹中半兵衛と話すのなんか望んでない…。見てるだけでよかったんです…



「…」

「…っ」
「僕の事を知ってるのかい?」

「え?はい」

「君は確か明智くんの所の女中だろう?」
「は…い(あ、お世話になってるからそう言われればそうか)」

「明智くんの所に、最近有能な薬師が入ったらしいんだけど、君知らないかい?」

「薬師ですか」

「そう」


「私は存じ上げませんけれど…」
「なんでも…」




え?ちょっと、待って下さい。私は知らないと言ったじゃないですか。
人の話を華麗にスルーしてますよ。




「なんだい?」
「な、んでもございません」

「話を続けさせて貰うよ。何でも戦の滋養、筋肉痛によく効く薬を作るらしいんだ」

「…」




ん?あぁ、それってニ○ニク卵黄擬きとビワの葉湿布ですよね。もうすぐ青梅の時期になるからそうしたらお腹下した時用に、梅肉エ○スと柑橘の季節になったらポカリ擬きを作ろうと思ってるんですよね。

ただ飯食うのもなんなので、お世話になってるから恩返し的に作ったそれが役にたててる様だから本当に嬉しい。何の取り柄もなくて申し訳なくしか思えてなかったから。

民間療法なのはわかるんだけど、なぜ作り方を知っていたのは大いなる謎でしかないけど、役にたてて本当によかったと思ったんですよね!あはははは。…ん、あれ?



「……」

「その薬師、君じゃないのかい?」
「違います」


「…」

「…」

「もう一度聞くよ。その薬師は君だろう?」



「………っ」

「沈黙は黙認だととらえさせてもらうよ。君、豊臣に来る気はないかい?」


「…」




うっわー軍師っぽい話し方だなぁ…。
来る気はない。
はい。と答えてもいいえ。と答えても聞き手のいい方にとられて、行く方にとらえられてしまいそうな聞き方ですよね、それ。

エセ占い師みたいなしゃべり方はやめて下さい。
引っ掛かると思ったら大間違いですからね!流石は軍師様ですよ。完全いい人な秀満さんならひっかかってしまいそうだけど。

って、だいたい沈黙は竹中半兵衛の専売特許でしょう!



「…ぷっ」

「え?」

「口に出ているよ、全て」
「は、え゛?」

「ふふ。面白くないな」

「えぇぇ…(明智さんみたいに言われた。竹中半兵衛って名前だけで普通より二割増しでポイントが高いからダメージも増して大きいじゃないかああぁ)」

「誉めているんだよ。返事を聞かせてもらえるかい?僕は待つのは嫌いなんだ」




うっわー本当に待つのは嫌いなんだ。とか言うんだ…
って、あぁ゛!?これって…
声を掛けられた時点でアウトだったって事ですか?ことですね。

じゃなければ、私なんぞが竹中半兵衛に声をかけられる訳がない。私ごときが声をかけられる筈もない。鈍い、鈍すぎるぞ私!

数分前にコケて喜んでた私、お前はバカだ!利三さんがいう通りだ…
コケるなら、場所を選べ!
ここがどの辺りかもわからないですけど…

どうしよう、かな。
竹中半兵衛は、私が返事を考えている様に見えるのか何も言わない。

はぁ…右手側は庭ですか、ちょっと痛いかも知れないけど、行動の先読みをされてない事を祈りつつ力の限りとう!と、跳んでみた。




「に゛ゃ!(素足だし思ったよりも砂利が痛いけど、読まれてなかった!)」

「…ぷっ。なんだい?その疑ってくれと言わんばかりの行動は」

「もう、疑われてるみたいなので、怖いので逃げます。失礼します。
あ、私ではありませんので、そこの所だけは誤解なきようお願いいたします!それでは、さようなら!」




と、庭を力の限り走って逃亡したのでした。
うん、流石としかいいようがないのだけど、知略だとか軍略だとかに長けてる人間はこーわーいー!

言葉に何かしらの罠が絶対にあるもの。

あのコケて一瞬目があっただけで何がどうなって、私に当たりをつけたのかすらわからなかったですよ。

私ってそんなに怪しかったのかなぁ、それともそれは竹中半兵衛が竹中半兵衛だからって事ですか?

わーい、流石は竹中半兵衛!
子供の頃からの憧れ武将様でいらっしゃる。

ダメだ。そんな事を思ってる場合じゃない。はぁ、…だから、見てるだけで良かったのに…
私みたいなのは、関わらないに限るんだけどなぁ…。

絶対に、絶対的に。





***





うぅ…結構痛い。足の裏がすり傷だらけに…ひりひりしてて消毒がムダにしみる。

足は利三さんに手当をしてもらいました。

素足で1.5メートル位の高さから砂利目掛けてダイブして、そのまま全力疾走してこれだけですんで良かった!と思ったんですが、利三さんには手当ての最中ずっと怒られてましたけどね。



「君は女性らしさをどこに忘れてきたの?」

「…探せばどこかに落ちてますかね?是非とも拾いに行きたいんですけど」

「…」


「アレですかね?明智さんに拾われた時辺りかなぁ?」

「あはは、それは笑えない冗談だよね。玉緒は俺にもっと怒られたかった?」

「うぅ…、ごめんなさいぃ」


「大人しくしていればこんな目に合わなくてすむのに。馬鹿だよね。痛いのは君なんだよ」


「…」

「どうしたの?」

「今度から気をつけます」
「なに?不気味なんだけど」

「素直に言ってるのにヒドイ!だけど、利三さんはいい人ですね。心配してくれてマジ感動です」

「玉緒は、本気で馬鹿だよね」
「あはは。今度から本当気をつけます。ありがとうございます」

「…」
「利三さん、面倒見のいいお兄ちゃんですね。いいなーお兄ちゃん!お兄ちゃんほしい。利三お兄ちゃん」

「玉緒は俺より年上でしょ」

「あ、そっか。じゃ利三さん私をお姉ちゃんって呼んでみる?うっふふっ玉緒お姉ちゃん〜。はい、呼んで…」
「玉緒お姉ちゃん」

「え、」

「姉上の方がいい?俺はどっちでもいいけど」

「…え」

「馬鹿も少しくらいなら可愛いけど、怪我をしてくるのはただの馬鹿なんだよ玉緒お姉ちゃん。お姉ちゃんなんだからあと少しだけでいいからしっかりしなよ。俺はずっと着いててはやれないし今日は他所の家にお邪魔しているんだからね」



「…」

「玉緒お姉ちゃん聞いてるの?」


「…う、」
「『う、』とは何だい?玉緒お姉ちゃん」

「ごめんなさいぃ。何だかこわいぃぃ。気を付けます。しっかりします、ごめんなさいぃ」

「あはは。わかったならいいけど、本当に気をつけるんだよ。ここは坂本城ではないんだからね」
「わかってます。わかりました。身にしみました」


「……」

「…なんですか、その疑いしかない眼差しは」


「まぁ、いいよ。他には怪我してない?」
「うん」

「そういう事はきちんと確認してからいいなよ」
「え、うーんと、」


「そこ」
「?」

「どうやったのかは知らないけど、腕擦りむいてるよ」
「え?あれ?いつだろ?あ、コケた時かな?」

「…こけた?」
「ありましたね、すみません、ごめんなさい」

「ほら、ちゃんと見せて」
「…うえぇ、し、しみる」
「我慢しなよ」

「はーい」




……あれ?

いま何かを思いだしかけた。
誰だったか私の腕を心配してよく擦ってくる人がいなかったかな?

…うーん、わかんないけど、





「そういえば、憧れの豊臣の軍師は見られたの?」

「え?あ、見られました!美人でした!素敵な声でした!」

「声?」

「声も素敵で…じゃなくて、それがね、聞いてくださいよ、見られた結果がコレなんです。酷いですよね。私は普通にしてただけなのに」

「意味がわからないよ。普通にしてたなら玉緒は会うはずない人なんじゃないの?」

「それがですね、廊下で見事にコケました。それが何故だか竹中半兵衛様がいた部屋の前だったみたいで」




「…」

「え?あれ?」



「馬鹿だなぁ」

「うぅ、そんなに感心したように言われると泣きたくなるじゃないですか。だけど、もう関わる事はないと思うから大丈夫だと思うんだけどなぁ」

「ふーん?」

「なんですか?」

「玉緒は変わったのに目をつけられやすい体質みたいだからね。少しだけ本気で同情するよ」

「いや、利三さんに真面目な顔して言われると本気で怖いから」

「いや、だから少しだけ本気だって言ったでしょ」
「そんな、」


「あはは」



涙目になってそうなのを吹き出すほど笑われてしまったけど、ここでは身よりのない私にとっては少しでも心配して貰えるのは嬉しくて仕方がない事だし、一応でも年頃の娘だと思ってくれてたのはビックリだけど、利三さんやっぱりいい人だ!


竹中半兵衛は怖かったけど、もう会うことないし一生の思い出ですよね!

見目麗しい軍師様でしたよ。軍師っぽい話し方も聞けたし今日はいい日ですよね。
子供の頃から憧れてた武将様に会えて内容は兎も角話す事もできたなんて煌めく一生の思い出の宝物になりました。


ふふふふふふふふっ。
うっふふふふふふふっ。

これは明智さんがうつってる。危ない、危ない。

20140106