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夏休みが終わって、リオの幼稚園通いが始まった。

レオくんは今日も朝から部屋にこもってお仕事。
なにやら急ぎの案件らしく、昨晩からずっと作業に没頭している。

こういうことは珍しいことではないので、わたしはリオと一緒に夕飯の買い物にでかけた。
今夜はきのこの和風パスタにしよう。
あとサラダもね。リオはなかなか野菜を食べてくれないから。


「きょうはパパといっしょにたべられるかな?」
「夕飯のときぐらいは降りてきてくれるよ」


どんなに忙しい時でも、一日一回はリオの顔を見ないと死ぬ!ってうるさいからな。
リオと二人で玄関のドアを開けると、目に飛び込んできた光景に一瞬息を飲む。


「レオくん!?」


廊下に倒れているのはレオくんだった。
わたしは鞄をその場に置いて、蹲っているレオくんのもとに駆け寄る。
顔を覗き込むと、レオくんは小さく呻いて顔をしかめた。


「どうしたの!?大丈夫?しっかりして!」


状況がわからないだけに下手に揺すったり動かしたりしたら危険だ。
そうわかっているのに、心配でレオくんの腕に飛びついてしまう。


「名前、落ち着いて……ちょっと熱があるだけだから」
「熱!?熱があるのわかってて仕事してたの!?」


よく見たらいつもより顔が赤い。
おでこに手を当てると、彼がひどく汗をかいていることに気づく。
体温を測らなくても高熱だとわかった。

朝もふらふらしてたけど、寝ぼけてるのかと思ってた!
だっていつもどおりへらへら笑うから!


「ママ、パパどうしたの?どこかいたいの?」


リオが近づこうとして躊躇っている。
わたしがパニックになったせいでどうしたらいいか混乱してしまったのかも。
落ち着かないと。

鞄からタオルを取り出して、リオに渡す。


「リオ、このタオルを水で濡らしてきてくれる?ぎゅってしぼるんだよ。できそう?」
「うん、できるよ!いってくる!」


リオなら大丈夫だよね。
洗面所ならリオ用の台が置いてあるし。
わたしよりしっかりしているかもしれない。

リオが走って行ったのを見送って、レオくんに向き直る。

えっと、まずなにをしたらいいんだ?
こんなところに寝かせておくわけにいかないし。


「と、とにかくベッドに!あ、その前に救急車呼んだ方がいい!?」


それより凛月くんを呼んだほうがいいかな!?
わたし一人だとレオくんを運べそうにない。
いやでもそんな時間ないし!

その場から離れようとすると、ぎゅっと手を引かれた。


「行かないで」


レオくんだった。
掴まれた手が熱くて泣きそうになる。

熱があるぐらいで死なないよね、大丈夫。


「ここにいるよ。どこにも行かないから」


手を握り返してあげると、レオくんは安心したように目を閉じた。