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- ナノ -

とうとう夏休みが終わってしまった。
俯いて生徒で賑わっている廊下を歩く。
夏休みの間も通っていたけど、人がいるとやっぱり足が重い。
このざわざわした感じも久しぶりだ。


2Bの教室について、入り口から中をそっと覗いてみる。

先に登校したクラスメートは、それぞれ自分の席についたり、数人で集まって楽しそうに会話していた。
……やっぱり入りづらいな。

わたしのことなんて空気だと思ってくれればそれでいいんだけど。
異物が混入することで、教室の空気を変えるのがこわい。


「あら、名字ちゃん、おはよう♪ 久しぶりねェ」
「……!」


背後から声がして思わず前に一歩飛び出してしまった。
おかげで知らないうちに教室の中。


「鳴上くん……」
「うふふ、その反応、小動物みたいでかわいいわァ♪ どうしたの?なにかあった?」


教室に入れなくてあたふたしてたなんて言えない。
それに、吃驚したせいでもう教室の中だし。

花火大会の日に、鳴上くんに会った時のことを思い出す。
夏休みの思い出が、それぐらいしか思いつかないなんて。


「べつに、なにもないです」


わたしは小さく首を振って自分の席に向かった。
朝からびっくり箱を開けた気分だ。

隣の席の凛月はまだ来ていなくて、わたしは席について小さく息を吐いた。


ここに座っていれば何事もなく一日が終わる。
そしてまた次の日が来て。少しずつ時間が経って。
気が付いたら一か月なんてあっという間。

わたしは晴れて退学できるんだ。


「ほら、着いたぞ〜……凛月、起きろよ!」
「ふぁあ、ふ♪ 席まで連れてって、ま〜くん……♪」
「おまえなぁ?」


一か月なんてあっという間だよ。きっと。