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- ナノ -

なるほど。確かにアイドルだ。

ただのクラスメートだと思っていたけど、同じ教室で勉強している彼らはみんなキラキラ輝くアイドルで。
いまも花火に負けないくらい魅力的なパフォーマンスを見せている。

隙あれば寝ている凛月だって、ステージの上では完璧なアイドルだった。
目が合った気がするけど、気づかなかったふりをしておこう。


「名字さん」


観客に混ざってライブを観ていると、急に声をかけられた。
今度は誰だ、と思って振り向くと、椚先生が立っている。


「先生、こんばんは」


そういえば夏休み前に椚先生を探していたのに、なかなか会えなかったんだ。
生徒指導で忙しそうだし、生徒会の顧問でもあるから先生を捕まえるのはわりと難易度が高かった。こんなところで会えるなんて。


「どうですか。少しは彼らに興味が湧いてきましたか」


先生は眼鏡の奥の瞳でじっとわたしを見つめた。
無表情だから少し威圧感がある。


「そういうつもりでここに来たわけじゃないんです」


兄と一緒に、と続けようとしたが、余計なことは話すべきではないと思って飲み込んでおいた。


「あの、先生。今度レポートを見てもらってもいいですか」


話を変えようと思って無理やりレポートのことを口に出した。
もともと先生にお願いしたかったことだし。
レポートはまだ3分の1も書けてないんだけど。


「ということは、まだ気持ちは変わらないようですね」


気のせいかもしれないけど、先生はちょっと不服そうだった。

思い返してみると、退学レポートを書き始めたころに比べて、知り合いも増えたし教室にも慣れてきた。だからといって、このままあそこにいたいわけじゃない。

油断したら駄目だ。
後戻りできなくなる前に早く学校を辞めないと。


「わたしは、学校を辞めます」


先生に向かって、というよりは、自分に向かって言い聞かせるように口にした。
夜空に打ちあがる花火がとても綺麗だった。