学校以外の場所でクラスメートに会うのは初めてだ。
だからどう反応していいかわからない。
しかも彼は制服ではなくて、私服でもなくて、なにかの衣装?を着ているし。
いまからなにかあるんだろうか。
「えっと、あなたは……」
そうだ、まだ名前がわからない。
同じクラスだからどこかで名前を聞いていてもおかしくないのに。
「あらやだ、まだ覚えてもらってなかったのね。鳴上嵐よ。気軽にお姉ちゃんって呼んでちょーだい……♪」
お姉ちゃん、なんて。気軽に呼べるわけないし。
鳴上くんは、初めて会ったときもこうやって自然に笑いかけてくれた。それだけは覚えている。髪を乾かしてくれた優しい手のことも。
彼はそのままわたしの隣に腰を下ろした。
並んで座るとまるで同級生には見えない。
男の子ってみんな背が高いからずるいなっていつも思う。
「名字ちゃんは一人? だれかと一緒に来たの?」
「兄と……」
独りぼっちだと思われたくなくて口を開いたものの、結果的には一人だったことを思い出して、視線を地面に向ける。
「約束してたのに、仕事で行けないって」
「あら、それは残念。でもお兄さんと仲が良いのねェ」
仲が良い……のかな。
わたしは、
「兄のことは嫌いです。優しいだけの人だから」
言ってから、こんなこと鳴上くんに話すことじゃないな、と思った。
急に変なことを言われて彼も困っているのではないか、と隣を見たのと同時に、
ドンッ!
「っ…………!」
という音があたりに響いて、わたしは思わず飛び上がった。
とっさに隣に座る鳴上くんの服の裾を掴む。
その大きな音が花火だと理解するまでに少し時間がかかった。
そっと隣を見ると、目を丸くしている彼と目が合う。
「あらあら、吃驚しちゃったのね。大丈夫?」
でもすぐにいつもの笑顔に戻って、わたしの心配をしてくれた。
わたしは慌てて彼の服から手を離す。気まずい。
「ごめんなさい」
消えそうな声で謝ると、鳴上くんは小さく笑って腰を上げた。
そのまま海のほうを指さす。
「いまからあそこでライブがあるの。よかったら名字ちゃんも見ていって?」
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