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創と別れたあと、執事たちの目をかいくぐって廊下を歩く。
傍から見れば屋敷に忍び込んだ盗人も同然。
屋敷の主が怯えながら廊下を歩くなんておかしい話だけど。


「お嬢。もうでるのか」
「わ!?」


ゆっくり、でも素早く、自然な流れで屋敷から姿を消そうと思っていたのに、突然背後から声をかけられて、思わず肩を上下させた。
紅郎、驚かさないで。


「おはよう……きょ、今日は少し早く登校しなきゃいけなくて」


右に左に目を泳がせながらしどろもどろになって適当な嘘をつく。
紅郎は大きいから熊さんみたいで少しこわいの。
見下ろされると心臓まで縮み上がってしまう。


「そうか。あいつらが騒がしくてすまねぇな」


悪い人ではないんだ。
見た目とは裏腹に優しいところがあるし、小さい頃はわたしにかわいい刺繍の入ったハンカチを作ってくれた。


「ううん、元気があるのはいいことだと思う。だからお仕事がんばって」


話をしながら一歩ずつゆっくりその場から去ろうとする。
そのまま紅郎が仕事に戻ってくれれば何も言うことはなかったんだけど。


「そろそろ時間か。おい、てめぇらいつまでも馬鹿みてぇに騒いでねぇで集まれよ!」


低いのによく通る声で呼びかけられて、わたしは飛び上がった。


「い、いいよ!みんな忙しそうだし。お仕事頑張って……わたしは一人で大丈夫だから」


慌てて紅郎の腕を引いても、時は既に遅しって感じ。

鉄虎が「大将〜!」と駆け寄ってくる。
おまけに廊下の奥から「名前か!?」とレオまで顔を出した。
レオ、無事だったんだね。って、そうじゃなくて。

どうやら今日も逃げられないみたいです。