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家の近所の公園に着くと、二人並んでベンチに座っている後姿を見つけた。
近づこうとして足を止める。
少し離れた場所で、二人の会話に耳を澄ました。


「パパ、ママのこと嫌いになっちゃった?」


ベンチに座るリオの足はまだ地面につかない。なかなか背が伸びないことを悩んでいたっけ。
リオはあまり背が高くならないかもね。パパの娘だから。


「そんなわけないだろ。ママのこと大好きだよ。もちろん、リオのことも!」


そう言ってリオの頭を撫でる。
わたしだってリオのことが好きだよ。


「リオ、大きくなったなー!初めて会ったときはこんなに小さかったのに!」


レオくんがリオを持ち上げて膝に乗せた。
わたしの視界からリオが消える。


「リオに会いたかったの?」
「ああ!リオが生まれてくるって聞いて、嬉しかった!早く会いたいって毎日言ってたら、名前にうるさいって言われてさ」


ほんとにうるさかったよね。
騒いでも早く生まれてこないから、って毎回いらいらしてたよ。

でもレオくんがいつも元気だったおかげで、わたしは落ち着いていられたんだ。


「ママ、リオにあいたいっておもってるかな?リオ、わるいこだからもういらないかも」


リオの声は泣きそうだった。


「そんなこというなよ〜。でも、勝手にいなくなるとママが心配するからな」


付き合い始めたころにすぐ行方をくらましてた人が言えるようなセリフじゃないけどね。
最後はちゃんと戻ってきてくれたけどさ。


「だって」


リオの声は急に小さくなった。
口にしたら怒られるんじゃないか、と戸惑っているみたいに。


「パパがどこかいっちゃって、リオのせいでママがかなしくなっちゃって。リオがパパのことさがしてきたら、ママがわらってくれるとおもったの」


陽が沈んでいく。
でもわたしの心には少しずつ光がさしていく。
すぐにでもリオの名前を呼んであげたい。


「そっか。リオはいいこだな。よし!パパと一緒にママにごめんなさいってしにいくぞ!」

「うん」


リオの返答はまだ元気がなくて、ちょっと不安そうだった。


「わっ」


急にレオくんがリオを肩車する。
泣きそうだったリオが、一瞬で笑顔になる。


「あ、ママだ」


くるっと振り返った二人と目が合った。
リオの顔から笑顔が消えても、わたしはもう迷わない。


「ごめんな、名前。一人にして」


先に口を開いたのはレオくんだった。
負けちゃったな。


「ごめんね、ママ」


続けてリオがおそるおそるわたしをみつめた。わたしはその小さな手をとってぎゅっと包み込む。


「二人を不安にさせてごめんね。一緒に帰ろう?」


優しく笑いかけると、少し驚いてから、リオは笑顔になった。
レオくんもいつもの笑顔。
やっぱり同じ顔だ。


「うん!」