洗濯物を取り込んで帰ってきたら、部屋の空気が重かった。わたしがいない数分の間になにがあった?
レオくんは真面目な顔をして紙とにらめっこしているし、リオは描いた絵を見つめて放心状態。二人のことだから喧嘩はしないだろうし、わたしの気のせいかな。
「レオくん、どうしたの?なんか静かじゃない?」
できる限り自然に、軽い感じで詮索してみる。わたしの気のせいなら、いつもみたいに、わははは、って笑ってくれるはず。
「べつに。どうせおれは壁に落書きするようなやつだし。おまえのいうことも聞かないもんな」
「はあ?急にどうしたの」
彼にしては返答が素っ気なくて、わたしまで思わず強い声音になってしまった。
レオくんと出会った当初は話しかけただけで「邪魔すんな!」って突き放されていたけど。リオがいる前でレオくんがそんな態度をとることなんてない。
わたしが困っていると、リオがトトトと駆けてきて、浮かない顔でわたしを見上げた。
「リオがへんなこといったから、パパおかしくなっちゃった」
え?
「何を言ったの?へんなことって?」
元々おかしかったよ、なんて言える空気じゃないから黙っておくとして。
リオはしばらく考え込んでから、首を横に振る。
「う〜ん……忘れた!」
いや、そこは似なくていいよ。忘れっぽいところまで似たら困る。
このままでは埒が明かないので、レオくんの機嫌を直すことにした。
「レオくん、なにか勘違いしてるみたいだけど、なにもないからね。怒ってないで一緒に夕飯の買い物行こうよ」
こういえば彼の場合すぐ気が変わって子供みたいに笑ってくれると思ったのに。
「いやだ。おれはいかない。名前が行けばいいだろ」
は?なんで拗ねてるの?
いつも一緒に行くっていうじゃない。わたしの想像以上に深刻な問題なのか、これは。
「どうしたの?なにを聞いたの」
洗濯物を置いてレオくんに近づこうとすると、彼はペンを握りしめて目を伏せた。
「うるさいな!いまは話しかけんなっ!」
「……っごめん」
それは明らかに怒気を含んだ声で。近づこうとした足を途中で止める。
急に彼との間にできた壁。
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