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わたしの名前を家族以外のだれかが呼んでくれること。それだけで世界が色づくこと。もうとっくの前に凛月から教わっていたのに。

ーー俺のことは凛月でいいよぉ。仲良くしよー、名前。


「どうして」


玄関の小さな門の前に凛月が立っている。迎えに来てなんていってないし、一緒に登校する約束もしていない。今日わたしが登校するとも限らないのに。彼はまるでそれが当たり前のことみたいに平然としている。


「おはよ、名前」


凛月の隣には真緒がいて、懐かしい笑顔で迎えてくれた。
久しぶりに見るのに、毎日会っていたみたい。

動かなかった足が、また別の意味で動かなくなってしまった。
突然のことに頭も追いつかない。


「学校行くんでしょ〜?俺より遅いなんて、名前は寝坊助さんだねぇ」

「おまえも人に起こされておいて何いってんだよ」
「俺の世話を焼くのがま〜くんのお仕事♪」


賑やかな二人の時間が進む中で、わたしは呆然と立ち尽くす。いつの間にか、わたしはひとりぼっちじゃなくなっていたみたい。こわがる必要はない。もうあんなことは起きないし、学校にはこの二人がいる。


「ほら、早くしないとほんとに遅刻するぞ〜?」
「行くよ、名前」


ぼーっとしているわたしを真緒と凛月が急かす。


「は、はい」


わたしは慌てて玄関から飛び出して、二人のもとに駆け寄った。なんだか慣れない感覚に戸惑いが抜けないけど。嫌な気分ではない。むしろ今までにないくらい心がどきどきしている。

二人のあとを追いかけながら、心臓の高鳴りが収まるのを待った。