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- ナノ -

他の何にも変えられないから君が大切なんだ。
ずっと俺の、


Stand by me!


「りつにい!」


名前を呼ばれて凛月が振り向くと、


「わっ」


次の瞬間、びたーん!と派手な効果音付きで名前が転んだ。ドミノ倒しの巻き添えを食らったかのように見事な転び方だった。顔面から床に飛び込む姿を目撃した凛月は、呆れて言葉も出ない。

走るなって言ったのに。

「うう……」

名前はゆっくり顔を上げて、おでこをさすった。
園指定の水色のスモッグが砂で汚れている。ぱっと見たところ、顔以外の部分に怪我はなさそうだった。
凛月がため息を吐きながら名前に近づくと、名前はおでこを押さえて涙目のまま凛月を見上げる。

「だいじょうぶ……」

どのあたりが大丈夫なのかはわからないが、彼女が両手で押さえているおでこよりも、小さな鼻から流れ出している赤い鮮血のほうが問題だと、凛月は思った。

「はぁ……」

朝から凛月のため息は尽きない。


*


「凛月ちゃん、いいの?名前ちゃんのこと放っておいて」

嵐が声をかけると、部屋の隅に寝転んでいる凛月が小さく手をひらひらと振った。聞いている、という合図だ。

「いいの〜……走っちゃだめって言ってるのにあいつが勝手に走るからいけないんでしょ。鼻血くらいすぐ止まるし」

いつもそうだ。走るな。騒ぐな。と言っても、名前は凛月の姿を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。そんなに好かれるようなほど、兄らしいことはしたことがないのに、名前はなぜか凛月に懐いていた。優しくするどころか、むしろ突き放してばかりいるのに。

「りつにい、まっか」

鼻にティッシュを詰めておとなしくしていた名前が、凛月のもとにやってきた。自分で詰めたのだろう。凛月は名前をスタジオまで連れてきただけで、その後の処理は一切していない。
名前のいうとおり、止血用のティッシュは真っ赤に染まっている。その血の量を見て、少しぎょっとしたものの、凛月は平静を装って名前に手を伸ばした。大丈夫、鼻血くらいで死なない。

「ティッシュぐらい自分で変えなよ……ほら、上向いて」

妹の相手をする気はなかったが、泣き出されても困るので新しいティッシュを詰めてあげる。名前はその間微動だにせず、お人形のようにじっとしていた。
取り替えが終わると、凛月は再度床に寝転ぶ。その姿を見て、名前は鼻声で呟いた。

「アリガトウ、リツニイ」
「はいはい。そんじゃあ俺は寝るから。おやすみ」

躊躇いなく目を閉じる。それ以上は干渉しない。小さな妹のことを、あまり視界には入れたくない。不安になるから。

名前も凛月にお礼を言った後は、少し離れた場所に移動しておとなしく床に座り込んだ。そのまま兄の背中をじっと見つめている。

その一部始終を見せられていたKnightsのメンバーは、始終はらはらして気が気じゃなかった。