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- ナノ -

今日の名前はいつもの「ようちえんいきたくない」を言うことができなかった。
なぜなら、送り迎え担当のなずなが名前のことを起こしに来なかったからだ。


――なずなにぃ、おこっちゃったのかな。


考えてみれば前回なずなが担当だったとき、大泣きしてだいぶ困らせてしまったことがある。


「ねぇ、なずなにぃ。どうしてようちえんいかなきゃいけないの?」


名前がなずなの様子を見に行くと、彼は自分の部屋にいた。


「行きたくないなら行かなくてもいいよ」
「え?」


今日はまだ「行きたくない」とは言っていないのだが、なずなは名前の質問に優しく返した。
「行かなくていい」なんて今まで言われたことがないので、名前は面食らう。


「でも、みんないけっていうよ。なずなにぃはだめっていわないの?」


不安になって問いかけると、なずなは名前の目を見て言った。


「だって名前は行きたくないんだろ?だったらにいちゃんは無理に行かせるつもりはないからな」


普段は何があっても幼稚園に行きたくないと思うけれど、いざ「行かなくていい」なんて言われると不安になってしまう。
自分が間違っているのか、正しいのか、わからない。


「でも、いかなきゃ、いけないんじゃ」
「どうしてそう思うんだ?」


なずなに問われて、うーん、と考え込む。
そういえばなぜ行かなければいけないのだろう。お兄ちゃんがみんな「行け」って言うから?


「ようちえんは、いかなきゃいけないとこ、だから」


悩んだ末にそう答えると、なずなは静かに頷いた。


「うん。でも、そんな決まりはないぞ。べつに幼稚園に行かなくてもにいちゃんも幼稚園の先生も困らないからな」
「そうなの」


ますます混乱してしまう。お兄ちゃんも先生も困らないのに、どうして幼稚園に行くんだろう。


「でも、名前はお友達と会えなくて困らないか?にいちゃんはいいけど、名前にとっては損することのほうが多いと思うんだけどな?」
「そうかも」


名前はお友達と遊ぶのが大好き。でも幼稚園に行くのは嫌。どうして嫌なのか思い出せないけど、朝起きて幼稚園に行こう、と思うまでの時間が嫌なんだ。
真剣に考えてみたら、やっぱりお兄ちゃんの言うことが正しいと思ったので、名前は幼稚園の鞄を引っ張ってきてなずなの腕を掴んだ。


「なずなにぃ、いまからようちえん、いっしょにいける?」
「いいぞ!にいちゃんが連れてってやりゅ!ちょっと待って、すぐ準備するからな〜!」


待ってました!とばかりになずなが腰を上げる。
名前が自分から幼稚園に行く、と言い出したのはこれが初めてだった。





「ナズすごいな!」
「にいちゃんはすごいんだぜ〜!」